9割以上が専門治療を受けていない
冠婚葬祭や歓迎会・送別会、普段の食事で楽しむ機会も多いお酒。心身のリラックスをもたらし楽しい気分にしてくれますが、飲み方を間違えると誰でもアルコール依存症になるリスクがあります。といっても、「多量に飲む」「朝から飲む」などといっただけで依存症というわけではありません。お酒を飲むと楽しくなるのは、アルコールが脳の報酬系に作用して快楽物質のドーパミンを放出するから。習慣的に飲酒しているとお酒への耐性ができ、快楽を得るために飲む量が増え、度数の強いお酒を求めるようになります。さらに飲酒が原因で遅刻や欠勤を繰り返し、お金がなくてもツケで飲むなど、家族や周りに迷惑をかけても、もはや自分ではやめることができません。こうなると依存症です。
患者の多くは中年男性ですが、近年は女性や高齢者も増えています。きっかけは様々で、仕事やストレスの解消、入眠を目的とする習慣的な飲酒などが挙げられます。また、安価なストロング系チューハイも、口当たりのよさとは裏腹にアルコール度数が高く、若者や女性が比較的短期間で依存症に陥る要因になっています。日本のアルコール依存症の生涯経験者数は約100万人と推計されていますが、治療を受けているのはたったの5万人程。多くの人はアルコール依存症の自覚がなく、また自覚があったとしても専門家の治療を受けていないのが現実です。
アルコール依存症ってどんな状態?
脳の機能が変化して飲酒のコントロールができなくなり、家族や仕事、健康よりもお酒が大事に。仕事中でも借金をしてでも飲酒をしてしまいます。
初期~中期
■「あと1杯だけ」と思うのにやめられない。
■「お酒を飲みすぎた翌日は気分が落ち込んだり、イライラしたりしやすい。
■お酒が抜けた後のだるさがつらくて、また飲んでしまう。
■飲みすぎると記憶をなくす。
■家族から飲酒について指摘されることが嫌で、隠れて飲んでいる。など
末期
脳が萎縮してアルコール性認知症に
長期にわたる大量飲酒は、理性を司る前頭葉を萎縮させて、アルコール性認知症を引き起こすリスクが。40~50代で発症することもあります。
アルコール依存症の離脱症状
離脱症状(禁断症状)は体内からお酒が抜けるときの不快な状態。苦しさを解消したくて、再び飲酒してしまうケースが多々あります。
体の震え
発汗
下痢
吐き気
不眠
イライラ
幻聴・幻覚
意識消失など
アルコール依存症と合併しやすい身体疾患
うつ病、脂肪肝、アルコール性肝炎、肝硬変、胆石、すい炎、逆流性食道炎、心筋梗塞、糖尿病、痛風、高血圧、脳梗塞など、様々な病を合併してしまいます。
出典:『短時間でしっかりわかる 図解 依存症の話』大石 雅之
【書誌情報】
『短時間でしっかりわかる 図解 依存症の話』
大石 雅之 著
特定の物質や行動をやめたくてもやめられない病の「依存症」。スマートフォンの普及や時代の変化にともない、依存症の種類も多様化しました。「スマホ依存」「ゲーム障害」などの言葉は、テレビやインターネットのニュースで目にする機会も増え、社会問題として注目されています。依存症は一度症状が出てしまうと完治が難しい病気です。本書はその依存症について具体例を交えながら、依存する人としない人の違いや依存症の進行の仕方、依存症が起こるメカニズムなどを、メンタルマネジメントや環境、生活習慣の観点から図解でわかりやすく解説。
公開日:2023.08.21