10代は処方薬や市販薬で依存症に
覚醒剤や麻薬(コカイン・ヘロイン・LSD・MDMAなど)は所持するだけでも犯罪で逮捕されて実刑になることもあります。厚生労働省策定の「第五次薬物乱用防止五か年戦略」によると、薬物事犯全体の件数は近年横ばいで推移しています。しかし30~50代に多い覚醒剤事犯が減少する一方で、大麻事犯は8年連続で増加。その約7割が30代未満で急拡大が顕著にあらわれています。
依存を起こす薬物は、中枢神経興奮薬・中枢神経抑制薬・幻覚薬の3つに分けられます。 覚醒剤(アンフェタミン、メタンフェタミン)やコカインは、中枢神経興奮薬(アッパー系)で、脳を活性化させて覚醒度を高めます。大麻やモルヒネ、ヘロインなどは、中枢神経抑制薬(ダウナー系)。脳の働きを抑制して覚醒度を下げるタイプで、アルコールや抗不安薬と同様の作用があります。LSDやMDMAなどの幻覚薬(サイケドラッグ)は、聴覚や触覚などを変容させて異常な感覚をもたらします。そのため、クリエイティブな仕事をする人の使用や、性行為に用いて依存に陥るケースがあります。処方薬や市販薬への依存も見逃せません。入手が簡単で心理的ハードルが低いため、10代の薬物乱用の約7割は処方薬と市販薬で占められています。これらの薬でも依存が生じ、吐き気や耳鳴り、けいれんなどの離脱症状も出てきます。
薬物依存症になる薬の種類
覚醒剤や大麻のような違法薬物だけでなく、病院で処方された薬や市販薬といった誰でも手に入る薬でも依存症になることがあります。
覚醒剤
強烈な覚醒作用で眠気や疲労感が消えるが、数時間後に激しい脱力感や疲労感に襲われ、幻覚や妄想も。
大麻(マリファナ)
快活で陽気な気分になり、視覚・聴覚・味覚・触覚などは過敏に。眠気や記憶の低下を招くことも。
コカイン
興奮作用があり、乱用すると幻覚や妄想などの精神症状を招く。皮膚の下を虫が動き回るような不快感も。
処方薬
睡眠薬や抗不安薬を多量または長期に服用すると、不安・焦燥感・頭痛などの離脱症状が。
市販薬
覚醒剤や大麻と似た作用を持つものがあり、リラックス効果や多幸感を得られる。
薬物依存症ってどんな症状?
薬物を多量・頻回に摂取し続けるうちに、使用量や頻度をコントロールできなくなる薬物依存症。下記のような症状があらわれます。
症状
■次にいつ薬物を使うか、常に考えている。
■薬物使用時のことを思い出すとドキドキしたり、そわそわしたりする。
■周囲の人に嘘をついてまで薬物を使おうとする。
■「1回だけなら大丈夫」と考え使用を始めるものの、結局連続で使ってしまう。
■薬物なしの性行為では物足りない。など
離脱症状
倦怠感
過眠
イライラ
被害妄想など
薬物依存症と合併しやすい身体疾患
薬物依存症に陥ると、急性心不全・高血圧・脳卒中・記憶障害・見当識障害・視力低下・肝臓障害・肝炎などを合併しやすくなります。
出典:『短時間でしっかりわかる 図解 依存症の話』大石 雅之
【書誌情報】
『短時間でしっかりわかる 図解 依存症の話』
大石 雅之 著
特定の物質や行動をやめたくてもやめられない病の「依存症」。スマートフォンの普及や時代の変化にともない、依存症の種類も多様化しました。「スマホ依存」「ゲーム障害」などの言葉は、テレビやインターネットのニュースで目にする機会も増え、社会問題として注目されています。依存症は一度症状が出てしまうと完治が難しい病気です。本書はその依存症について具体例を交えながら、依存する人としない人の違いや依存症の進行の仕方、依存症が起こるメカニズムなどを、メンタルマネジメントや環境、生活習慣の観点から図解でわかりやすく解説。
公開日:2023.08.23