4:人とかかわる場面|家族や人の悪口を言いふらすとき
○エピソード
父は一人暮らしなのですが、よく面倒をみてくれているヘルパーさんやお隣さんについて、ひどい悪口を言います。最近は家族である私のことをヘルパーさんに悪く言っているようです。
【対応1】「事実ではない」と決めつけていないかを振り返る
周囲が「悪口」と思っている本人の話は、記憶のあいまいさから出てくる作り話なのでしょうか?実際には本人が言っているような出来事が起きていないでしょうか?まずは思い込まず、検証してみましょう。
また、どちらにしても、それらの背景には本人の悲しみや苦痛があるのではないかと考えてみましょう。家族として身に覚えのないことを言いふらされているのはつらいことですが、認知症の特性により、記憶と自分の負の気持ちを結び付けて思い込み、表現してしまうこともあります。
【対応2】悪く言ってしまう相手に事前に事情を話しておく
本人が家族の悪口を近所の人などに言いふらし、それが事実無根の場合、家族はとてもつらい思いをしているはずです。そうし場合は、本人とあなたの両方を守るためにも、悪口を言っている相手に、事前に事情を説明しておくといいでしょう。実際には怒っていないことであること、本人の寂しさやつらさから、「記憶のすり替え」が起こっていること、あなたもそれで心を痛めていることを理解してもらいましょう。
こうした「記憶のすり替え」は、もともとある負の感情を解消することで少しおさまります。何かしら本人が苦しんでいることがないかを観察し、普段から関係をよくしておくことで、それ以上の悪化を防ぐこともできます。
【出典】『認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方』著:山川淳司 椎名淳一 加藤史子
【書誌情報】
『認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方』
著:山川淳司 椎名淳一 加藤史子
認知症は、理解しにくい言動を引き起こす脳の病気です。家族が「どう言葉をかけたらいいんだろう」「どう接したらいいのかな」「とてもつらい」と感じることが多いでしょう。「認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方」では、介護現場の専門家が日々の接し方や対応のヒントを提供し、プロの視点と方法で、家庭での介護が少しでもラクになるように、ご本人とともにかけがえのない日々を過ごしてほしいという願いが込められています。「認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方」を活用して、実践してほしいと思います。今後のためにも読んでおきたいおすすめの一冊です。
公開日:2024.07.21