自動車大国のアメリカで日本車が選ばれる理由【図解 地理と経済の話】
大きさではなく性能で勝負
アメリカの自動車産業は、第二次世界大戦中、対戦後を通じて大いに繁栄しました。特に戦後は消費者からのニーズの高まりに応えて、各自動車メーカーからさまざまな車種が発売され、仕事に生活にレジャーに、なくてはならない国民の必需品になっていきます。
そんななか、1970年代に入ると、アメリカの自動車産業にとって大きな転機が訪れました。日本車の攻勢です。小型ながらも価格が手頃で燃費がよく、性能面に優れていてアフターサービスも充実した日本車。それに比べ、従来のアメリカ車は大型で迫力こそありましたが、燃費が悪く壊れやすいという欠点がありました。
消費者のニーズは日本製の小型車へと移り、アメリカの三大自動車メーカーであるビッグスリー(フォード、GM、クライスラー)はかつてない苦境に追い込まれます。アメリカの対日貿易赤字が増加の一途をたどると同時に、自動車産業で働く労働者の失業問題もからんで日米間に深刻な貿易摩擦が生じました。
その後も対立や協調をくり返しながら、しのぎを削る日米の自動車産業ですが、現在もアメリカの新車販売台数の4割が日本のメーカーの車という現実があります。現地生産分が含まれるにしろ、アメリカ市場における日本車に対する信頼には根強いものがあるのです。
アメリカとの貿易摩擦の原因に
1970年代、アメリカは日本に対して大幅な貿易赤字を抱えていた。主な原因となったのが自動車産業。日本製の小型車の普及により、アメリカの三大自動車メーカーであるビッグスリーが経営難にまで追い込まれたのである。自動車産業は日米いずれにとっても基幹産業。対日圧力が強まるなど、両国で大きな政治問題となった。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 地理と経済の話』
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 地理と経済の話』
著者:井田仁康
著者プロフィール
井田仁康:筑波大学名誉教授。博士(理学)。1958 年生まれ。日本社会科教育学会長、日本地理教育学会長などを歴任し、日本地理学会理事。筑波大学第一学群自然学類卒。筑波大学大学院地球科学研究科単位取得退学。社会科教育・地理教育の研究を行っている。著書や編著書に『読むだけで世界地図が頭に入る本』(ダイヤモンド社)、『世界の今がわかる「地理」の本』(三笠書房)などがある
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公開日:2024.10.14