先発投手の勝利を消してしまうこともある! プレッシャーとの向き合い方とは? 巨人、高梨雄平投手の連載日記「ナシさんのアリな話 鉄腕奪取」第7回!

第7回 どんな時でも貫く「プレッシャーとの向き合い方

コラムも7回を迎え、気づいたこと

ラブすぽ読者のみなさん、読売ジャイアンツの高梨雄平です。このコラムも今回で7回目。みなさんに少しでも楽しんでもらえれば、と思って続けていますが、いかがでしょうか?回を重ねていくうちに、このコラムでは僕自身が持つ「持論」をしっかりと伝えていこうと思うようになってきました。

ここまでコラムを続けてきた肌感覚としては、何かに“迎合”するような内容になったコラムは面白くないのではないかと仮説を立てています。せっかく、「連載コラム」という場を設けてもらっているので、これからも僕自身の考え方や、やり方を読者のみなさんに伝えていければと考えています。

高梨雄平

優勝争い真っ只中に考えていたこと

さて、今回のテーマは「プレッシャーとの向き合い方」です。このコラムが公開されるのは10月なので、すでにレギュラーシーズンが終わり、おそらくはクライマックスシリーズが開催されている頃。とはいえ、これを書いている現時点の僕は、まだ優勝の行方も決まっていない「2024年9月の高梨雄平」です

チームは今、広島東洋カープ、そして阪神タイガースと熾烈な優勝争いをしています。1試合の勝敗で順位が入れ替わる、マジックが減る……そんな日々を過ごしています。

高梨雄平

周囲から見たら「プレッシャーがかかる」「重圧がかかる」状況だと言えるでしょう。もちろんこれはプロ野球選手に限った話ではありません。ビジネスの世界なら大事なプレゼンがあったり、学生の方ならテストや受験の本番……どんな人でも生きていれば「プレッシャーを感じる」局面は起こりうるはずです。

「プレッシャーと向き合う」ことを考えたとき、前提としてそのシチュエーションを「楽しめる」レベルなのか「緊張する」レベルなのかで、対処の仕方は変わってくると思います。たとえば僕の場合、慣れていないことや初めて経験することは「悪い緊張」を感じるケースが多い。たとえば、初めて「講演会」をすることになったときは、本番前はけっこう緊張しました。逆を言えば正直「野球の試合」で緊張することは、今ではほとんどありません。これは、僕がここまでプロ野球という舞台で毎年、何十試合も投げてきた経験があることが大きいと思います。

ただ、これにも落とし穴があります。試合で「悪い緊張」はしないのですが、テンションが上がりすぎて、思うようなパフォーマンスを発揮できないことがあるんです。プロ野球選手にもいろいろなタイプがいて、気合いが入って高揚することで、いつも以上の力を発揮できる選手もいます。そういう選手は、いくらでもテンションを上げていいと思います。ただ、僕は違う。いわゆる「入れ込み過ぎ」がパフォーマンスにつながることは基本的にありません。自分でもそれは分かっているので、マウンドに上がるときには、なるべく自分を抑えて、俯瞰で見るようなイメージを心がけています。緊張を飼いならす話しはまたの機会にできればと思います。

高梨雄平

菅野さんの勝ちを消してしまった時

実例を挙げるとすれば、9月15日の中日戦。僕は3対2とリードした6回表、2死一、三塁の場面でマウンドに上がりました。僕の前を投げていたのが菅野(智之)さんで、この試合にシーズン15勝目がかかっていました。ここを抑えれば、菅野さんに勝利投手の権利を持たせたまま次につなぐことができる――。そんなシチュエーションだったので、正直自分の中ではテンションが上がりすぎてしまいました。結果的にタイムリーを打たれて菅野さんの勝ちを消してしまい、そこは本当に申し訳なかったんですけど、ここで気をつけなければいけないのが「結果だけ」に左右されないこと。野球というスポーツは相手がいるので、自分のパフォーマンスと結果が必ずしも一致しません。ベストボールを投げて打たれることもあるし、失投を打ち損じてくれて抑えられることもある。あの試合は、振り返ると自分自身もテンションを上げ過ぎてマウンドに上がってしまったし、それでベストなパフォーマンスが出せなかった。結果も打たれてしまいました。そこは、次に生かさなければいけないと感じています。

僕自身の性格とリリーフ投手という仕事の特性上、どちらかというとチームの勝敗よりも「選手個人の数字」がかかっているときのほうが、空回ってしまう傾向が強いです。たとえば誰かの初勝利とか、節目の勝利みたいな区切りの数字が頭にあると、どうしても入れ込んでしまう。そこの折り合いをしっかりとつけられるようになれば、さらに成長していけるんじゃないかなと思っています。

結局、どんな状況であっても「プレッシャーのかかる場面」と向き合うためにはまず、自分にフォーカスすることが重要。チームが優勝争いをしている状況であっても、僕は「次勝ったらゲーム差が……」とか、「マジックが……」みたいな情報はなるべく入れません。なぜなら、そういう情報は自分にフォーカスするための障害になるから。フラットな状態でいたいのに、なにか情報を入れると必ずズレてくる。野球だけでなく、どんな場面でもまずは「自分がやれること」「自分にとってベストなパフォーマンスを出す」こと、そして自分自身を知ることを普段から意識することが、いわゆる「プレッシャー」と実際に向き合ったとき、「緊張」ではなく「楽しめる」ことに繋がるんじゃないかなと思って、毎日を過ごすようにしています。

高梨雄平

芝山ゴルフ倶楽部 視察プレーのご案内