エンジンよりも翼に注目しよう
ここで「自分の外側にある自然のエネルギー」などと言うと、何やら超能力的なオカルトのように感じるかもしれませんが、そうではないので安心してください。「フォース」は、物理学やバイオメカニクス(運動生理学)に基づいた、非常に科学的で論理的なエネルギーです。
たとえば飛行機が空を飛べるのは、エンジンがプロペラを回したりジェット噴射をして推力を生むからですが、科学的に考えると、その推力のパワーだけで空を自由に飛んでいるわけではありません。空気と翼が影響し合って揚力を生んだり、空気抵抗をコントロールして重力に逆らい、初めて空を飛べるわけです。エンジンの推力が自分の筋力だとすれば、揚力や空気抵抗、重力などが「自分の外側にある自然のエネルギー」に当たります。これはオカルトでも何でもなく、科学と物理の力だということがわかると思います。
これはゴルフスイングにも当てはまります。前述のようにアマチュアゴルファーの多くは、飛ばしたいと思ったときに自分の内部の力をたくさん出そうとするばかりで、自分の外部にある力をまったく利用できていません。これは、スロットルを無闇に開けてエンジンをフル回転させようとしているだけで、翼や機体の形状や向きを無視しているような状態です。
しかし効率よく飛ばすということはゴルフも飛行機も同じで、エンジンの状態はそのままに、物理の法則をうまく利用してより大きなスピードを生み出すことが大事なのです。飛行機でいえば、効率よく揚力を生み出したり空気抵抗を減らすことであり、 ゴルフスイングでいえば反力や遠心力、重力を使って効率よくクラブヘッドを加速させ ることです。
アマチュアの多くは、プロゴルファーはエンジンの馬力が大きいから飛ばせるのだと思っています。もちろんプロゴルファーはプロアスリートですので、アマチュアよりも大きなエンジンを積んでいるかもしれませんが、飛ばせる本当の理由は、エンジンの馬力よりも、機体の構造や翼の使い方にあるのです。
【書誌情報】
『フォース理論で飛ばす! 世界基準の飛距離アップ術』
著者:吉田洋一郎
飛距離アップの方法として、腕力に任せてクラブを思い切り振ること、そのために筋力トレーニングが必要と考えるゴルファーが多い。ただ、これは勘違い。飛ばすためには力んで振ってもダメですし、トレーニングによって直接的にスイングがよくなるわけではないのです。だからこそ、筋力に頼らないスイングを目指すほうが効率的といえます。では、飛距離アップには何が必要か。それが本書のテーマである「フォース」なのです。「フォース(FORCE)」とは英語で、「力」という意味。スイングに関わるすべての力で、筋力だけでなく、重力、反力、遠心力など自分の外にあるエネルギー(外力)も含んでいます。この本では、「フォース」を効率的に使ってスイングスピードを上げ飛距離を伸ばす方法を紹介。外力の中でも「地面反力」「遠心力」「反動」「ミッドハンドフォース」の4つに焦点を当て写真、図版を多用して解説しています。また、アマチュアゴルファー4人に著者が実践レッスン。「フォース理論」に基づく指導を1カ月行い、その成果も収録しています。
公開日:2020.07.11