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症状と漢方処方 かぜ【生薬と漢方薬の事典】

Text:田中耕一郎

症状と漢方処方 かぜ

発熱やせき、鼻水、頭痛などさまざまな症状があらわれるかぜ。その原因は季節によって異なり、風邪や寒邪、風熱邪、燥邪など、それぞれの季節の邪気が体内に侵入することで起こると考えられています。処方も原因によって異なるので、何が原因なのかを見極めることが大切です。また、陽虚や陰虚など、もともとの体質によっても、かぜの治療法は異なります。

病邪からみる風寒によるかぜ

陽虚の人は特にこじれやすいので注意

処方:葛根湯

秋・冬の寒い時期に症状が出やすい

風邪と寒邪によって起こるのが、寒い時期のかぜです。もともと陽虚があって体が冷えやすい人は、寒さによってより体が冷え、かぜをひきやすくなります。冷えて血行が悪くなり、頭痛や筋肉のこわばりなどもあらわれます。もともと冷えのある人は、冬は特に無理をしないように気をつけましょう。陽虚の人が冬にかぜをひくと、長引いて悪化しやすいので要注意です。

セルフケアとしても使える葛根湯

かぜの漢方薬として知られている葛根湯は、安全に使える薬なので、風寒邪によるかぜのひきはじめにセルフケアとしても多く用いられます。

ただし陽虚の人が風寒邪にあたると、体がどんどん冷えて葛根湯では温める力がたりないことがあります。この場合には麻黄附子細辛湯を用います。附子が体の奥からしっかりと温める働きをします。

column:インフルエンザには麻黄湯

インフルエンザには麻黄湯

麻黄湯も風寒のかぜに効果のある処方です。配合されている麻黄と桂皮が、体表面からしっかりと体を温め、適度な発汗により体表の邪気を取り除きます。インフルエンザのときに用いるのも麻黄湯です。ただし麻黄湯は発汗作用のある麻黄を多く含むため、発汗過多やふらつきなどが起きることがあるので使用には注意が必要です。

体を温めるという作用から、麻黄湯は冷え性の改善にも用いられることがあります。

病邪からみる風熱によるかぜ

炎症を起こしやすい夏場に多いかぜ

処方:銀翹散

熱感があるときは温めない

夏に流行する熱感のある伝染性のかぜです。扁桃腺がはれて熱をもったり、皮膚に湿疹ができて見るからに赤く熱をもっているなど、いろいろな場所で炎症を起こしやすくなります。夏に流行する子どもの手足口病もこのタイプ。風熱のかぜは、風寒のかぜに比べるとこじれやすいのが特徴です。

夏のかぜといっても、エアコンに当たって寒くなってかぜをひいた場合は、風寒によるかぜです。かぜによって寒いと感じているか、暑いと感じているか、あらわれている症状を見極めることが大切です。

熱をさまして解表する

かぜというと体を温めるとよいと考えがちですが、風熱のかぜは、温めてしまうと炎症を起こしやすくなり湿疹もできやすくなります。

温かくすると悪化する風熱のかぜには、体内の熱をさましながら、汗を出して炎症をとる銀翹散を用います。

銀翹散はかぜによるのどの痛み、せき、口の渇き、頭痛などの症状を緩和します。

column:風寒と風熱の中間のかぜには香蘇散

なんとなくかぜっぽいな、かぜをひいたかな、そんな軽い風寒邪と風熱邪の中間のかぜには、香蘇散を用います。

香蘇散は気の巡りをよくしてすっきりさせる効果があり、普段から気滞のある人や、体力が低下している人に適しています。また香蘇散はかぜだけでなく、神経症の人が気持ちを落ち着かせる安定薬としても使われています。

病邪からみる燥邪によるかぜ

乾燥に弱いときにウイルスに感染

処方:麦門冬湯

陰虚の人はこじれやすいので注意

秋になって湿度が下がってくると、乾燥に弱い肺がウイルスに感染しやすくなります。せきが出るけれど痰が出ない、せきが長引く、息苦しい、のどの渇きなどの症状があらわれます。

もともと陰虚の人は、このタイプのかぜをひくと、こじらせて悪化することがあるので、秋に入って空気が乾燥してきたら気をつけるようにしましょう。

燥邪によるかぜには、陰液を補い、肺をうるおす作用のある麦門冬湯を用います。粘膜をうるおすので、かわいたせきや気管支炎の改善にも効果があります。

養生・セルフケア

症状と漢方処方 かぜ【生薬と漢方薬の事典】

過ごし方

陽虚の人は冷えやすいので冬の寒さに気をつける、陰虚の人は乾燥に弱いので秋に注意など、自分の体質を知っていると、どの季節に弱くなって、どんな症状を起こすのかがある程度パターンとしてわかってきます。自分の弱いところに邪気が引き寄せられるので、日頃の自分の体質を知っておくことが大切です。

かぜの薬といっても、すべての人のかぜに効くわけではありません。かぜの薬を飲んでいてもなかなか治らないときは、自分の体質と季節をセットにして、原因となっている邪気を見極めるようにしましょう。

食べもの

風熱邪のかぜは、のどの炎症が強く出るので、アイスクリームなどの冷たいものを食べることで、のどを一時的に冷やすと楽になります。ただし体全体を冷やす必要はなく、炎症を起こして熱をもっている部分を冷やすようにします。

風寒のかぜでは、体を冷やすのはかぜを長引かせることになるので避けます。ショウガやネギ、ニンニクなど、体を温める作用のある食材をとるようにしましょう。

【出典】『生薬と漢方薬の事典』著:田中耕一郎

【書誌情報】
『生薬と漢方薬の辞典』
著:田中耕一郎/ 監修:奈良和彦・千葉浩輝

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