MCIの人たちは疲れや痛みを感じない!?
私が認知症対策の運動指導を始めて数年たった頃、MCIの人たちに共通の特徴があることに気づきました。それは「いくら運動しても疲れない」ということです。
健常者のみなさんと一緒に反復運動をしてもらうと、ある程度の回数で健常者は「きつい、もうできない」と悲鳴をあげます。ところがMCIの人たちはつらい素振りも見せず、いつまでも運動を続けるのです。こうした光景をたびたび目にするうち、私は「これには感覚神経が関係しているのでは」と思うようになりました。
私たちが体を動かすときは、脳から動かしたい筋肉へ、運動神経を通じて指令を伝えます。そして筋肉を動かすと刺激(筋刺激)が生じ、それが今度は感覚神経を通じて脳へ伝わるしくみです。ですから感覚神経の不調で筋肉からの刺激が届かなければ、脳は疲れや痛みを感知できません。MCIの人たちはこの状態に陥っているのではないか、と考えたのです。
その後の研究を通じてこの予測が正しいことが実証されました。認知機能と感覚神経の深いかかわりが明らかになったのです。
MCIの人は感覚神経の働きがにぶい
運動神経と感覚神経の働き
感覚神経とは
筋肉が動くことで生まれる筋刺激を、脳に送るのが感覚神経の役割。MCIの人はこの感覚神経のつながりが悪く、脳へ刺激がうまく伝わらない。
認知症の人が長距離を徘徊できるのは上と同じ理由。体力は限界を超えているのに、感覚神経がうまく働かないため、疲れや痛みを感じないまま歩いてしまうのです。
運動神経とは
体を動かすときに、大脳から目標の筋肉へ送る信号。
筋刺激とは
大脳からの電気信号を受けた筋肉が動き、「痛い」「疲れた」などの筋刺激が発生する。
認知症の人が長距離を徘徊できるのは上と同じ理由。体力は限界を超えているのに、感覚神経がうまく働かないため、疲れや痛みを感じないまま歩いてしまうのです。
【出典】『認知機能改善30秒スクワット』著:本山輝幸
【書誌情報】
『認知機能改善30秒スクワット』
著:本山輝幸
「約束の日時を間違える」「今言ったばかりなのに覚えていない」――。
そんな認知症の初期段階や軽度認知障害(MCI)なら健常者レベルまで脳機能は戻せる!
認知症予防・改善専門の運動療法士が教える、奇跡の30秒スクワット!
「日時がわからなくなる」「食べたものが思い出せない」「今言ったばかりのことを覚えていない…」――。
認知機能の低下に気づくきっかけはさまざまですが、「なんだか最近記憶力が悪いかも…」と自分で自覚している人はもちろん、高齢の家族と接していると、「前より少しおかしい……」と違和感を感じる人もいるのではないでしょうか。
それはもしかしたら認知症の初期段階、もしくは“認知症グレーゾーン”と呼ばれる『軽度認知障害(MCI)』という認知症の前段階かもしれません。
軽度認知障害は何もしなければそのまま“4年以内には50%、6年以内には80%が認知症になってしまう”と言われる状態ですが、その段階、もしくは認知症になっても初期段階であれば認知機能を健常者レベルまで戻せる方法があります。
それが、認知症改善専門の運動療法士である著者が教える、『認知機能改善30秒スクワット』です。
著者の20年以上の研究により、“体の感覚神経と脳機能には相関関係がある”ということが明らかになってきました。
感覚神経とは、痛い、熱い、寒い、などを体が知覚する神経のこと。
徘徊する中度以上の認知症患者は痛みをあまり感じないため、どこまでも歩いて行ってしまいますが、そのように『感覚神経』が鈍くなってしまっている人ほど認知機能が衰えてしまっているのです。
ただし、運動と言ってもウォーキングやジョギングなどの有酸素運動ではなく、『本山式感覚神経トレーニング』という筋力トレーニングです。
トレーニングと聞くとつらそうなイメージもありますが、30秒だけでもしっかり感覚神経に刺激が入り、認知機能の改善に繋がるように開発されたのがこのスクワットです。
太もも、おしり、ふくらはぎなど、重要な下半身の感覚神経を1つの運動で鍛えられ、時短なのに効果絶大な運動法により、認知機能の改善が期待できます。
日常生活に支障は出ていないものの、もの忘れや、今言ったことをすぐ忘れてしまうような症状がある人、その家族にはぜひ手に取って頂きたい一冊です。
公開日:2025.01.12