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こう読むと面白い! 上つ巻【眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 古事記の話】

Text:谷口雅博

こう読むと面白い! 上つ巻

『古事記』の上(かみ)つ巻は天地のはじまりから書き起こされて、初代神武(じんむ)天皇の誕生までが描かれています。

『古事記』はそもそもが天皇家の起源と継承の次第を描くものですので、話の中心は当然そこに関わるところになります。天上界高天原(たかあまのはら)における天神(あまつかみ)の出現、イザナキ・イザナミの国生み・神生み、アマテラスオオミカミの誕生、天孫降臨(てんそんこうりん)などの神話により、アマテラスオオミカミ→オシホミミノミコト→ホノニニギノミコト→ホヲリノミコト(山サチ)→ウガヤフキアヘズノミコト→カムヤマトイハレビコノミコト(神武天皇)といった流れの中でさまざまな神話が展開します。

そうした『古事記』神話の中で特に面白いのは、スサノオの存在、大国主神(おおくにぬしのかみ)
の神話、ホノニニギ以降の神々の人間的な行動、といったところになるでしょうか。

おおまかに区分すれば、神々の活動としては、イザナキ・イザナミ神話、アマテラス・スサノオの神話、大国主神の神話、葦原中国(あしはらのなかつくに)平定と天孫降臨、日向三代(ひむかさんだい)の神話となります。これらの神話は、イザナキ→アマテラス→という天皇の皇統に繋がっていく系統と、イザナミ→スサノオ→オオクニヌシという、出雲側の神に繋がっていく系統に分けることができます。

イザナキとイザナミは、それぞれ葦原中国と黄泉国(よもつくに)とでその住む世界が分割されるわけですが、スサノオは亡き母イザナミを求めて葦原中国を追放され、その結果アマテラスのいる高天原を訪れてそこで大暴れして、そのためにアマテラスが石屋に籠もって世界が真っ暗闇になるという事態を引き起こします。その後高天原も追放されたスサノオは、出雲に降ってヤマタノオロチを退治し、助けたクシナダヒメと結婚して子孫を生んでいきます。六世孫として誕生するのがオオクニヌシです。
ここまでの神話展開は間違いなくスサノオが主役であり、スサノオが世界を掻き回すことによってどんどんと話が進んで行き、世界が構築されて行きます。トリックスターと言われる所以(ゆえん)です。
主流のアマテラスよりも目立つように書かれているところが面白いところです。

そして、オオクニヌシが誕生してからは、この神を主役とする話がかなりの分量を費やして描かれていきます。はじめはオオナムチと呼ばれていた神が、文字通り地上世界の主、オオクニヌシとなるまでの成長物語を、女性達との婚姻物語の形を取りながら内容豊かに描かれていきます。

どんなドラマや物語でも、主役だけでは成り立ちません。かたき役が充実してこそドラマは盛り上がるものです。スサノオは破天荒な性格をしていて空気の読めない若干憎たらしい神として描かれています。オオクニヌシは兄神たちにいじめられながらもやがては成長し兄神たちを追い払って自らが地上の主となるというように、かなり英雄的な神として描かれています。
そうしたかたき役の存在があってはじめて『古事記』神話の面白さが獲得されていると思われます。

また、天神から天皇へと繋がる位置にいるニニギとホヲリですが、ニニギは地上で出会った女神と一夜の契りを結びますが、その一夜で女神が懐妊したことに疑いをもち、自分の子ではなくて地上の神の子なのではないかと言います。ホヲリは自分の仕事である山の獲物を取ることに飽きて、兄と役割の交換を提案し、拒否する兄にしつこくねだって実現させたあげくに兄の大事な道具を無くしてしまいます。どちらも、とても聖人君子的な描かれ方はしていません。天上の神から地上の神へと推移していくなかで、血の通った、欠点ももった存在として描かれていく、これもまた『古事記』神話の面白さのひとつだと思います。

現代社会では、視覚的にあらゆる情報が入手可能であるために、かえって想像力・創造力は弱まってしまっているように思えます。限られた情報の中で豊かに神話的想像力を働かせたであろう古代の人々によって創造された世界は、極めて不思議な力が発揮される世界であると同時に、極めて人間的・現代的な感覚も含まれています。そこが面白いところだと思います。

古事記クローズアップ 上つ巻

上つ巻のポイント

上つ巻には、国生みと神々の出現から、アマテラスオオミカミの孫ニニギノミコトが下界に降臨するまでの神々の時代が綴られています。

登場する主な神々

別天つ神(ことあまつかみ)

アメノミナカヌシノカミ(天之御中主の神)
タカミムスヒノカミ(高御産巣日の神)
カムムスヒノカミ(神産巣日の神)
ウマシアシカビヒコヂノカミ(宇摩志阿斯訶備比古遅の神)
アメノトコタチノカミ(天之常立の神)

神世七代(かみよななよ)

1. クニノトコタチノカミ(国之常立の神)
2. トヨクモノノカミ(豊雲野の神)
3. ウヒジニノカミ(宇比地邇の神)・スヒチニノカミ(須比智邇の神)
4. ツノグイノカミ(角杙の神)・イクグイノカミ(活杙の神)
5. オオトノジノカミ(意富斗能地の神)・オオトノベノカミ(大斗乃弁の神)
6. オモダルノカミ(於母陀流の神)・アヤカシコネノカミ(阿夜訶志古泥の神)
7. イザナキノカミ(伊耶那岐の神)・イザナミノカミ(伊耶那美の神)

アマテラスオオミカミ(天照大御神)
オモイカネノカミ(思金の神)
フトダマノミコト(布刀玉の命)
アメノコヤネノミコト(天の児屋の命)
アメノタヂカラオノカミ(天の手力男の神)
アメノウズメノミコト(天の宇受売の命)
スサノオノミコト(湏佐之男の命)
アシナヅチ(足名椎)
テナヅチ(手名椎)
クシナダヒメ(櫛名田比売)
ニニギノミコト(邇邇芸の命)
サルタビコノカミ(猿田毗古の神)
オオクニヌシノカミ(大国主神)
オオアナムヂノカミ(大穴牟遅の神・大国主神のまたの名)

登場する主な神々

『古事記』名場面 ―上つ巻―

『古事記』名場面 ―上つ巻―

【国生み・神生み】

『古事記』で最初の神々が生まれ、国土が形成されていく

【天(あめ)の石屋(いわや)隠れ】

アマテラスオオミカミが天の石屋に隠れてしまう。

【八岐(やまた)の大蛇(おろち)】

ヤマタノオロチという大蛇を退治する物語。

【稲羽(いなば)の素兎(しろうさぎ)】

島から島へ渡ろうとして失敗した兎の物語。

【国譲(くにゆず)り】

オオクニヌシノミコトは葦原の中つ国を天つ神御子に譲った。

【天孫降臨(てんそんこうりん)】

高天の原の神々が葦原の中つ国に降り立つ。

神々のいる世界

高天の原(たかあまのはら)

天つ神が住む天上界が高天の原。
アマテラスオオミカミが統治している。

黄泉の国(よみのくに)

死者の国。出産で命を落としたイザナミノミコトが住む。

葦原の中つ国(あしはらのなかつくに)

イザナキノミコトとイザナミノミコトが国土を固め、オオクニヌシノカミが国づくりをしたのが葦原の中つ国。国つ神と青人草(あおひとぐさ)が暮らしている。

根の堅州国(ねのかたすくに)

黄泉の国と根の堅州国とは同じ場所であるという見方もあるが、『古事記』ではあいまいなままにされている。スサノオノミコトが住んでいる。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 古事記の話』監修:谷口雅博

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 古事記の話』
監修:谷口雅博 日本文芸社刊


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時代を超え読み継がれている日本最古の歴史書『古事記』。
「天野岩屋戸隠れ」「八岐の大蛇」「因幡の白兎」など誰もが聞いたことがある物語をはじめ、「国生み・神生み」「天孫降臨」「ヤマトタケルの遠征」など、壮大なスケールで繰り広げられる神々の物語は、たんなる日本の歴史にとどまらない、興味深く魅力的である。
本書は『古事記』の上中下巻から、神話・物語を厳選して収録し、豊富な図とイラストで名場面や人物像、歴史的背景を詳解する。『古事記』の面白さ、魅力を凝縮した一冊!

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