背骨の入れ替えで大きな三角形の面を振ろう
重心距離のあるヘッドが付いたクラブを振る感覚や仕組みを理解するための方法が、水平素振りです。どうしたらへらが起きてくるかを自分で見つけなくてはならず、水平面に対して左腕を下げてくる動きでへらを立てることが重要で、手が水平面の上に浮いたり、流れてしまうとへらは倒れてしまいます。
同じ長さのアイアンセットで話題のアメリカのブライソン・デシャンボー選手は、両腕のユニットを崩さず、手首を固定して腕とクラブのアングルを一直線にしたまま振るという1プレーンスイングにトライをしていますが、彼のフォロースルーに左ひじを畳む動きが入っていることからも、へらを起こす動きが必要なことを証明しています。ロボットのようにトゥダウンや遠心力に絶対負けないグリップができれば、ワンアームで振るのも可能でしょうが、人間がクラブを振る場合は、へらを起こす技術を昇華させることで、ロボットをしのぐパフォーマンスが可能になるのです。
ここでもう一つ大事なのは、左の肩やひじ・手元・ヘッドが作る大きな三角形です。この三角形は「スイング中に自分がコントロールしなければならない面」と言い換えることができ、この面をコントロールできれば小さな面(クラブフェース)はついてくるので「大が小を兼ねる」ということです。松山英樹選手に代表される自分の面が崩れない選手が最近の強い選手の特徴で、これに比べると多くの日本人選手に見られるクラブを振るスイングはワンランク下に見えてしまいます。
自分でプレーしていても、大きな三角形を意識し始めてからは明らかにアイアンの精度が上がっていますし、松山選手レベルであれば、150ヤード以内を普通に打ったら間違いなく1ピン以内につく精度を持っていると思いますし、グリーンを狙う全てのショットがピンの根元に落ちるのも納得できます。少し前は大きな面が崩れない選手といえばハンター・メイハンやザック・ジョンソンなど、ロングヒッターではない選手が目立ちましたが、そのイメージを松山選手が変えたと言えます。いま、結果を出している強い選手は、背骨の入れ替えで大きな三角形の面を振っているスイング具現者と言えるでしょう。
最近ではビリー・ホーシェル、テレサ・ルー選手や畑岡奈紗選手も身体の入れ替えで、大きな面を振って好結果を残しています。悩めるアマチュアゴルファーは自分の面が壊れてしまいますが、その原因はへらが倒れる動きであり、クラブが離れようとする動きです。自分の面が壊れている中で小さな面をスクェアにしようとするので、再現性のあるインパクトが作る飛距離と方向性は手に入りません。
【書誌情報】
『一生ブレない身体のスイング』
著者:永井延宏
ゴルフのスイングはゴルフクラブと自分のバランスが大切。最新のクラブヘッドが大型化するにつれて、クラブに働く力と自分の力を均衡させることが重要になっている。この本では、最新のクラブを題材に、いまのクラブに合ったボールの打ち方を写真でわかりやすく解説。さらに、クラブに働く遠心力など、見えない力に負けない身体の効率的な使い方を練習ドリルとともに紹介。「入れ替え動作」という、身体の動かし方を写真でくわしく説明している。
公開日:2020.08.23