コシヒカリ一強の理由とは? 昭和の食卓を彩ったササニシキとの分かれ道【眠れなくなるほど面白い 図解 米の話】


日本の主役米・コシヒカリはどうして一強なの?
昭和の二強が分かれた運命の分岐点
日本で一番人気の米といえば「コシヒカリ」です。ただし、かつてその座を狙う存在がありました。それが「ササニシキ」です。昭和後期から平成初期にかけて、全国第2位の作付面積を誇る人気品種でした。
ササニシキは1963年に宮城県で誕生し、そのさっぱりとした口当たりと粘り気の少ない食感で、寿司職人や料亭の料理人たちから絶大な支持を受けていました。とくに1980年代には年間約200万t 近くが生産されるなど、一時はコシヒカリと並ぶ“二強”体制を築いていたのです。しかし1993年の冷害により、ササニシキは壊滅的な被害を受けました。寒さや病気、倒伏に弱い性質があだとなり、多くの農家が他品種へと切り替えていったのです。
一方のコシヒカリは、もちもちとした食感と上品な甘みで、炊きたてはもちろん冷めてもおいしいという特長を持ち、家庭の食卓でも高く評価されてきました。さらに、耐病性や収穫量の安定性にも優れ、農家にとっても育てやすい品種でした。こうした特長から品種改良の親となることも多く、「ひとめぼれ」や「あきたこまち」「にこまる」など、コシヒカリの特徴を受け継ぐ品種が各地で次々に登場。現在では全国の水田の3分の1以上が、こうしたコシヒカリ系統の米になっています。
人気米の誕生と転機

1956年 コシヒカリが福井県で誕生
1963年 ササニシキが宮城県で誕生
1985年ごろ ササニシキ、全国第2位の作付面積に
1993年 冷害で東北地方に壊滅的打撃/ササニシキが急減
➡ 耐寒・安定品種への切り替えが進む
2000年代〜 コシヒカリが全国で生産拡大、 一強時代へ
ササニシキは完全に消えたわけではなく、冷めても硬くなりにくく糖質も控えめなため、弁当や寿司、糖質を気にする人に再び注目されています。
コシヒカリが圧倒的に人気のワケ

コシヒカリ
食味:もちもち・甘い・冷めてもおいしい
栽培性:倒れにくく病気に強い
人気の理由:家庭向け・安定生産・高評価
ササニシキ
食味:あっさり・やわらかい・和食向き
栽培性:倒れやすく冷害・病気に弱い
人気の理由:寿司・弁当向け・希少な存在
このように、食味・栽培性・人気の理由という3要素のバランスが、
コシヒカリを「一強」に導いたといえます。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 米の話』著:トキオ・ナレッジ
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 米の話』
著:トキオ・ナレッジ
スーパーなどでの米不足、転売、価格高騰などで、ニュースやワイドショーでここ最近毎日のように取り上げられる今いちばんのホットトピック「米」。
備蓄米の放出により、古米がスーパーやコンビニで置かれるようになりましたが、味や品質、衛生面、値段、美味しく食べる方法など、普段何気なく食べていた米について興味をもって調べる人が増えてきました。
また、近年糖質制限という逆風もある一方で、健康志向や和食ブームの高まりにより「米」の再評価も進んでいます。
本書は、私たちの食卓に欠かせない「お米」にまつわる知識・文化・歴史・雑学などを、図解を交えてわかりやすく、楽しく紹介する教養本です。
「“令和の米騒動”はひとつの原因では語れない」
「年々減少する米の消費量 それでも起こる米不足」
「備蓄米ってなに? 米に消費期限はないの?」
「外国米が日本市場になかなか入れない理由」
「炊飯器に放置された保温状態の米の消費期限は?」
「白米より栄養価アップ!今人気の分づき米とは」などなど
読めば誰かに話したくなる米知識が詰まった一冊です。
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