スフィンクスは何のためにある?【眠れなくなるほど面白い 図解 古代エジプトの話】

スフィンクスは何のためにある?
王権の象徴から信仰の対象へ
スフィンクスの役目はその格好や配置から、「守護」と思われがちですが、それだけではありません。有名なギザの「大スフィンクス」で見ていきましょう。大スフィンクスは、カフラー王のピラミッドの参道と河岸神殿のすぐ隣にあることから、カフラー王の治世にカフラー王の顔に似せて造られたのではないかとされています。ファラオの頭をしたライオンの姿をしていて、ライオンは王権を象徴するものと考えられていました。
スフィンクスの前には「スフィンクス神殿」が建てられています。現在はその跡しか見られませんが、24本の柱と12本の彫像が配置されていたことがわかっています。また、東西それぞれの中央に至聖所(最も神聖な場所)があったため、朝夕の太陽の礼拝のための神殿ではないかとみられています。カフラー王以後、大スフィンクスは砂に埋もれ、長年隠れたままになっていました。
新王国時代になると、スフィンクス信仰が高まります。大スフィンクスは、「ホルエムアケト(「地平線にいるホルス神」)」と呼ばれ、太陽神ラーと王権の守護神ホルスが合体したラー・ホルアクティ神の化身と考えられました。トトメス4世は、夢に現れたラー・ホルアクティ神のお告げに従い、埋もれていた大スフィンクスを掘り起こして修復し、姿を取り戻します。スフィンクスはそれ以降、歴代の王の信仰の対象ともなっていきました。
太陽神の象徴としての大スフィンクス

スフィンクス信仰の強さを示す「夢の碑文」
トトメス4世は王位継承の正統性と信仰心を証明するために、大スフィンクスの足元に石碑「夢の碑文」を建てた。
「夢の碑文」
トトメス4世の夢に太陽神ラーホルアクティが現れ、「スフィンクスの体を埋めている砂を取り除けば王位が与えられる」と告げたという内容が刻まれている。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 古代エジプトの話』著:河合 望(エジプト学者・考古学者/筑波大学人文社会系教授)
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 古代エジプトの話』
著:河合 望(エジプト学者・考古学者/筑波大学人文社会系教授)
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