人間らしい高度な精神性をつくる重要部位
前頭葉には、運動機能を司る運動野、会話をするために重要な働きをする運動性言語野(ブローカ野)、思考や判断など高度な知的活動を司る前頭前野があります。なかでも前頭前野は大脳の働きを知るうえで、もっとも重要な部位です。
前頭前野は、側頭連合野、頭頂連合野をはじめさまざまな大脳の部位から情報を集め、それらを基に、認知・実行する機能があります。
この機能により前頭前野は、目的に応じて計画的に行動を決定したり、新しいものを創造したりすることができます。脳が体の司令塔なら、前頭前野は大脳の司令塔とも呼べるでしょう。
前頭前野の働きの様子を具体例で見てみましょう。この例は、車を運転中に赤信号で停車していた人が、信号が青に変わったのを見て車を進めたという場面です。前頭前野の重要な働きによって、大脳が情報処理→判断→命令→実行の流れを生んでいることがわかります(実際は、もっと多く複雑に脳と神経が働きますが、わかりやすくするために簡略化しています)。
また、前頭前野は、喜怒哀楽の感情や意欲にも関わりがあることがわかっています。
たとえば、大脳の奥にある扁桃体という「快・不快」「恐い・恐くない」などの感情を司る部位にも、情報を送ってその判断に影響を与えています。
前頭前野が送る情報は、大脳内にあるさまざまな情報を検討して得た判断の情報ですので「理性」ともいえるものです。前頭前野は、感情に流されない人間らしい大人な活動をつくりだすという、高度な役割を担っているというわけです。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 脳の話』
著:茂木健一郎
シリーズ累計発行部数150万部突破の人気シリーズより、「脳」について切りこんだした一冊。「なぜ、脳から意識が生まれるの?」「ひと目ぼれは、どうして起きる?」「頭がいいって、どういう人?」人の脳は不思議でいっぱい。身近な疑問でナゾを解明! いまだに解明されない現代科学最大の謎といわれる脳。脳を知ることは、自分自身を知ることです。テレビや雑誌など、さまざまなメディアで活躍する脳科学者の著者が、脳の働きや仕組みを最新のトピックスや知識を使い、図解を交えてわかりやすく解説します。脳力を最大限に発揮させる方法から、「ひらめき回路」の鍛え方、、AI時代の脳の活かし方、脳の機能まで、疑問形式で楽しく読める脳の話が満載。仕事や学習、恋愛、人付き合いなど日常の生活でも役に立つ、脳のエンターテインメント教養本です。脳は自分を映す鏡。人工知能時代に負けない、ヒトの脳の大きな可能性がわかります。
公開日:2020.12.18