【自己犠牲】なぜミツバチは刺すと死ぬのか? 一族の繁栄を優先する「利他的な死」とは【眠れなくなるほど面白い 図解 死の話】

個体の死を超えた遺伝子の生存戦略

個体の死が群れを強くする

 自然界には、自らの命を代償にして仲間を守る生き物がいます。たとえば、ハチやアリのような社会性昆虫はその代表です。メスのミツバチ(働きバチ)は巣を守るために敵に毒針を刺しますが、針の先に連動して内臓が引き抜かれ、命を落としてしまいます。それでも、群れを守るために戦うのです。

 また、オスのアブやアリは、交尾の際に生殖器が体からちぎれて死に至ります。これは、メスの体内に自身の一部をとどめておくことで、ほかのオスとの交尾を防ぐためです。命をかけて子孫を確実に残す――それが彼らの進化した戦略といえます。役割を全うした個体の死は、次の世代をつくるための必然的な段階として組み込まれているのです。

 こうした自己犠牲のしくみとして、W・D・ハミルトンは1964年に「血縁淘汰説」を提唱しました。自分が生き残らなくても、遺伝子を共有する仲間が生き延びれば、自分の遺伝子の世代に受け継がれる。死を恐れずに仲間を守る行動は、実は遺伝子の生存戦略なのです。

 死は個体の終わりであっても、群れにとっては次の世代への継承となります。命を捨てる行為が、結果的に命をつなぐ――自然はその矛盾のなかに、進化の知恵を含んでいます。

ハチとアリの個体の死を超えたしくみ

ハチやアリは、群れの存続のために自らの死を受け入れる。個体の犠牲があってこそ、命が次の世代へ受け継がれていく。

遺伝子の視点で見る「血縁淘汰説」

自分と血のつながりが強い女王アリを支え、その子孫を増やしていけば「自分の遺伝子」は残り、つまりは利益となる。利他的な行動は生存戦略のひとつといえる。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 死の話』監修:島田裕巳

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