インパクト時のロフト角はアドレス時より大きくなる
ダイナミックロフトとはインパクトの瞬間のロフト角を指し、インパクトロフトともいいます。
アドレスはインパクトの再現とよくいいますが、実際はアドレスを再現するのは上半身と下半身の捻転差がなく、スイングの加速度も低いパッティングくらいです。
ダウンスイングの始動で腰の回転が先行し、インパクトでは腰がアドレスよりも45度くらい左を向きます。
体重配分もアドレスでは左右均等とすれば、インパクトでは左足荷重の圧力が強まります。ドライバーショットでは、インパクト時に体重の9割くらいを左に圧力をかけるプレーヤーもいますが、左右平等でインパクトするプレーヤーもいます。
両手の位置はアドレスと同じか、ほんの少し左に移動しますが、シャフトの戻りやヘッドの重心の深さの影響により、クラブのロフト角はアドレスより大きくなるといえます。
ロフト角の多いドライバーを使えば飛ぶとは限らない
ダイナミックロフトが同じ15度と仮定した2本のドライバーの場合、一方はロフト角15度のドライバーでアタックアングルがほぼゼロのレベルブローでインパクトすれば、スピンロフト(ダイナミックロフトとアタックアングルがつくる角度)も15度ほどになり、ボールのスピン量が増えてボールが上がりやすくなります。
そして、もう一つはロフト角が10度のドライバーを使って、仮にボールをプラス5度のアッパーブローにとらえて、ダイナミックロフトを15度にすればスピンロフトは10度ほどになり、スピン量は少なめで出球は高くなります。ヘッドスピードの関連性もありますが、後者のほうが強い球でキャリーも出ます。
当然、後者のほうが風の影響を受けにくい、キャリーがグングン伸びる「強い球」です。飛距離アップにはこうした球が有利であるのは確かです。
クラブスピードもボールスピードもあまり速くない人の場合、ロフト角が11~12度くらいのドライバーを使えばボールの打ち出し角が高くなります。
自分のボールスピードに合ってないハードなクラブでは、打ち出し角もかせげないし、適正のスピン量も満たせず、飛距離はロスしてしまいます。プロたちがよく口にする「低スピンで飛ばす」というのはボールスピードがあってこその話です。
自分のボールスピードにマッチした適正値を知ろう
下の表は、クラブスピードとボールスピード、打ち出し角、ボールのスピン量の適正値を表したもので、キャリーの目安も表示しました。
この表でとくに注目して頂きたいのはボールスピードと打ち出し角、スピン量の最適値の関連性です。
打ち出し角の数値は、ほぼインパクトロフトに相当すると考えてください。
これを見れば適正のスピン量は3000回転以下とは断言できないわけです。昨今の低スピン傾向のドライバーやボールは、女性ゴルファーにとってはスピン量が少なくて、ボールがお辞儀して早くフェアウエイに落ちてしまうドロップ現象が起こりやすいですから、スペック選びには注意が必要です。
一般のアベレージゴルファーはクラブスピードが37、または40の数値を参考にするといいでしょう。
【書誌情報】
『ゴルフは科学で上手くなる! 科学が明かすスイングの原則と上達法』
著者:/石井忍
時代の流れとともにクラブやボールなどの道具が進化してきたが、それに合わせるようにゴルフスイングの研究や分析も進んできた。本書の著者は、スイングをメカニズムの視点で考える「物理的運動」として理解し、それに「スポーツ的運動」の要素を加えることが大事と考えている。スイングを物理的視点から考えると多くの発見があり、スイングの本質に近づいてく。この本はスイングを型にはめて解説するだけのレッスン書ではなく、スイングを科学的に学びたい人に向けた教科書である。その上で正しい体のアクションを覚えれば、上達のキッカケづくりに必ず役立つ格好の一冊といえる。
公開日:2021.03.26