人は自分の行動に一貫性を持ちたがる
訪問販売員に「話だけでも聞いてもらえませんか?」と言われ、断るつもりでしぶしぶ話を聞いていたらいつの間にか商品を購入していた、なんて経験はありませんか?
このように相手が承諾しやすい小さな要求から段階的に要求を大きくし本来の要求を成功させる技術を「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」と言います。この技術を調べるためにフリードマンとフレージャーは戸別訪問による実験を行いました。
実験者たちは、「交通安全の市民会」と称して住宅街を訪問し、「安全運転をしましょう」と書かれた看板を玄関先の庭に設置させて欲しいと頼みました。
ふつうに看板設置を要請した場合の承諾率は16.7%でしたが、2週間前に小さな要請を承諾した家の場合は、なんと承諾率が最大で約76%まで上昇したのです。2週間前に行った要請とは全部で4パターンあり、看板設置の時とは別の団体として訪問しました。
ひとつ目は「安全運転」と書かれた10センチ角のステッカーを車や窓に貼ってもらうという要請。ふたつ目は地域美化のステッカーを貼ってもらうという要請。3つ目は交通安全の立法化を求める嘆願書への署名。4つ目は地域美化の立法化を求める嘆願書への署名。これらの小さな要請を事前に行ったことで、ひとつ目の要請後の看板設置承諾率は約76%、それ以外の要請後の看板設置率は約47%でした。
被験者は、小さな要請を承諾したことで「自分がいいと感じた要請は受け入れるべき」という一貫性を持ちたいと思う心理が働き、看板設置の承諾率が上がったのです。こういった一貫性を持ちたいと思う心理のことを「一貫性要求」と言います。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学』
監修:亀田達也
「社会心理学」は、心理学の中でも重要かつ人気のジャンル。個人同士の協力、競争、攻撃、援助など「他者との関係」、そして集団、組織など個人を取り巻く「社会との関係」をテーマとする「社会心理学」を、わかりやすく、かつ堅苦しくならないように図解・イラストを用いて紹介する。「社会現象と心理学」、「職場における心理学」「社会の在り方と心理学」など、現代日本において興味深く読めるような身近なテーマを立てて、さらにこれまで行われた心理実験と結果など、「心理学」全般の内容を誌面に取り入れて解説する。会社、学校、家庭、友人ーー集団や社会の中の個や対人関係の本質、行動原理を社会心理学から読み解く1冊!
公開日:2021.03.28