スポーツの練習の第一条件
●身体の発達には順序がある
あらゆるスポーツにおいて、動作が安定を得て最高の能力を発揮するためには、軸の存在は欠かすことができません。そして、人が軸を操り、自在に身体を使うために高める能力には、実は順番があります。たとえば、トレーニングをすれば筋肉は肥大してきますが、骨格に筋肉の重さを覚えさせながらやらないと関節を痛めます。自分の体重で扱える重量を超えると痛み始め、痛みが取れるまでトレーニングをやめて、また同じフォームで再開する。けれど、同じフォームで同じことをしていれば、再び同じ場所が痛くなります。これを繰り返している人も多いようです。
骨格には、その成長度によって適した筋肉の大きさがあります。骨の強度が増えない限り、その強度を上回る筋肉はつかないのです。つまり、「発達には順序がある」ということです。身体は軸を作って安定することを覚えると、可動域が増えます。筋肉を引き延ばすのではなく、軸ができることで関節の可動域が増えるわけです。こうして得た動きを繰り返すことにより、一定の柔軟性が得られ、動かす順番を理解できるようになります。
身体を柔らかく使うことは、骨格の可動を存分に生かせる状態で動作すること。柔軟性の中にはコントロールする能力も含まれますから、同じパーツを同じように動かせるようになります。そしてこれを繰り返すことで、身体のリズムが生まれます。軸から軸に安定してリズム感が出てきたときに、「このタイミングなら力が出やすい」ということを覚えるのです。
さらに、最大出力以下の出力を軸の中でコントロールしていくと、スピードが生まれます。出力やスピードを最大レベルにせず、かつ一定のリズムで繰り返し続けられるようにコントロールすると、スタミナがつきます。この繰り返しで身体のコントロールが高まってきたときに、人間は集中力を得られるのです。こういった手順で身体は発達しますから、「柔軟性はいらないが、パワーはほしい」という感じで、ひたすら重いものを持つという偏ったトレーニングをするとケガをします。
トレーニングとは、身体を変化させながら成長させていく、という行為ですから、自分のレベルに適った負荷をかけて、身体の成長を待たなければならないのです。
【書誌情報】
『廣戸聡一 ブレインノート 脳と骨格で解く人体理論大全』
著者:廣戸聡一
「本来の自分の身体の動きと理屈を知り、身体だけでなく精神的な部分との兼ね合いの中で、“いかにして昨日の自分を超えるか”という壮大なテーマを、人体理論の大家であり、日本スポーツ・武道界の救世主と呼ぶに相応しい、廣戸聡一が、自身の経験と頭脳のすべてを注ぎ込んで著す最強最高の身体理論バイブル。四半世紀でのべ500,000人の臨床施術により、多くのトップアスリート、チーム、指導者、ドクターとの関わりの中で行き着いたトレーニング&コンディショニング理論の集大成、ここに完成。オリンピック競技を含む全52種目を個別にも論及、紐解いた、すべてのアスリート、指導者、スポーツファン必携の書!
公開日:2021.05.17