日本人は勝てる
●日本人が誇れること
野球のバッティングフォームを日米で比較すると、日本人はフォームが画一的である一方、メジャーリーグには独特のフォームの選手が大勢いるために、誤解されていることがあります。それは、アメリカの指導者はフォームをいじるのではなく子どもがやりたいようにさせ、日本の指導者は型にはめて教えているというものです。しかし、私が実際にアメリカに行って感じたことは、アメリカの指導者が好きにさせているのは「教えられないから」であって、決して日本の指導者の指導法が悪いということではありません。むしろ、日本の指導者は、身体の外側よりも内側を見て指導をしているため、身体の内側や脳から動きが変わることにも関心を持てているのです。
また、アメリカでは、こんなこともありました。ある日本人投手に、「ボールの行動を理解しよう、力を出す瞬間だけちゃんと考えて」とアドバイスしたところ、急速が5km上がり、以前よりもキレのある変化球が投げられるようになったのです。必然的に何イニングも点を取られない選手になったわけですが、すると、審判が試合中にタイムをとって、ボールのチェックをしたり、その投手の帽子やベルトを確認したりと、あからさまに疑い始めたのです。
急激な変化が起こったために、彼らは何か不正があるのではないか?と思ったのです。これはつまり、身体の外側だけを見て、身体の中のことを理解できていないからです。脳や身体の内側から動作が変化することが信じられないのです。また、欧米の人たちに「4スタンス理論」を教えるとき、「軸」を現地の言葉に翻訳しようとするのは至難の技です。「それは身体に存在するスティックなのか? どこか固くなるのか?」などという質問が返ってくるのです。「軸」の存在は、私たち日本人だからこそ理解できる概念だとすると、これも日本の誇れる文化のひとつと言えるかもしれません。
●日本人の特性を披露する時代に
これまで、いろいろな国がいろいろなものを発明してきました。それらをじっくりと考察し、試行し、クオリティの高いものをたくさん作ってきた日本人が、その特性をスポーツ界で披露する。そろそろそういう時代に突入したのではないかと思います。世界的な見方では、日本人は平均レベルが高いものの突出はできないと言われていますが、そんなことはありません。日本人は人種的に力負けすることなどないのです。
そんなところに初めから逃げ場を作っていては、世界と戦うことはできません。今、世界で活躍する選手はさまざまな競
技で現れています。その多くが、日本人ならではの特性を生かしています。いつまでも誤った固定観念に縛られることなく、日本人ならではのプレーを可能にすることが重要なのです。
【書誌情報】
『廣戸聡一 ブレインノート 脳と骨格で解く人体理論大全』
著者:廣戸聡一
「本来の自分の身体の動きと理屈を知り、身体だけでなく精神的な部分との兼ね合いの中で、“いかにして昨日の自分を超えるか”という壮大なテーマを、人体理論の大家であり、日本スポーツ・武道界の救世主と呼ぶに相応しい、廣戸聡一が、自身の経験と頭脳のすべてを注ぎ込んで著す最強最高の身体理論バイブル。四半世紀でのべ500,000人の臨床施術により、多くのトップアスリート、チーム、指導者、ドクターとの関わりの中で行き着いたトレーニング&コンディショニング理論の集大成、ここに完成。オリンピック競技を含む全52種目を個別にも論及、紐解いた、すべてのアスリート、指導者、スポーツファン必携の書!
公開日:2021.08.14