信頼のおける案内人を得よ
敵の侵攻を受けて立つならともかく、それ以外の戦争では他国の領内を進軍することになる。そこが敵国であろうと第三国であろうと、地理に不案内であることに変わりはなく、行く手には山岳や森林地帯、険阻な要害もあれば、沼沢が広がっているかもしれない。迂闊に進軍して行き詰まれば万事休す。
自ら死地に跳び込むような愚行を避けるためにも、地理の把握は念入りに行なう必要がある。
事前の偵察により地図を作成するか、買収により現地の地図を入手する手もあるが、平面図では得られる情報に限界がある。 そこで、大軍が移動するにはどの道が最適か、奇襲を仕掛けるのに適した間道や獣けもの道みちはないか、伏兵のいそうな場所はどこか、それらの情報に精通した案内人を雇う必要が高まる。
案内人は自軍の斥候を同行させたうえで偵察に出すのが最善である。なぜなら、案内人の情報が確かであるかどうか、案内人が敵のまわし者でないかを確認できるからである。
こうした下準備をすることなく、やみくもに進軍を開始したたなら、伏兵に悩まされるのが落ちで、補給路を断れれば水や食糧の確保にも窮し、本格的な戦闘に入る前に敗北が不可避となる。
そんな醜態を避けるためにも、地理の把握は念入りに行なう必要があるのである。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 孫子の兵法』
著者:島崎晋
新紀元前500年頃、孫武が勝負は運ではなく人為によるとし、その勝利の法則を理論化した兵法書。情報分析や見極め、行動の時機やリーダー論等、現代に通じるものとして今も人気が高い。「名言」を図解でわかりやすく紹介する。
公開日:2021.08.06