羽田空港が集合場所!? 移動距離1000km超の“広すぎる北海道”に驚く!『眠れなくなるほど面白い 図解 北海道の話」監修者インタビュー【後編】

毎年発表されている『都道府県魅力度ランキング』では15年連続トップを獲得するなど、誰もが一度は憧れる「北海道」。ラブすぽでは今回、『眠れなくなるほど面白い 図解 北海道の話』(日本文芸社)の監修者・和田哲先生に直撃インタビュー! ガイド本には載っていない、現地に住んでいるからこそ分かる“魅力”を存分に語っていただきました!【全2回の第2回】

“都市”と“自然”が共存する稀有な環境

――インタビュー前編では、北海道の「食」の魅力を存分にお話しいただきましたが、今回はそれ以外の文化や歴史、風土についてお伺いします。

和田 「食」が北海道の大きな魅力であることは間違いありません。ただ、それ以外にも北海道ならではの素晴らしさはたくさんあります。中でも「自然との距離感」は世界的に見ても稀有なものだと感じています。

――というと?

和田 たとえば「スキー」に代表されるウインタースポーツです。おそらく、東京をはじめとした都市圏に住まれている方にとっての「スキーやスノーボード」は、夜行バスや車で長時間移動して、1~2泊して楽しむモノではないでしょうか。ただ、札幌は北海道最大の都市でありながら、学校や仕事が終わった後に気軽に滑りに行けるほど、スキー場が近くにあるんです。「せっかく予定を組んでスキーに行ったのに、天候が悪くてあまり楽しめなかった……」なんて経験、ありませんか?

――確かにありますね…。

和田 北海道民は違います。手軽に行けるからこそ、「今日は天気が悪いからやめておこう」と気軽に判断できるんです。これは世界的に見ても非常に珍しい環境です。たとえば4年に一度開催される冬季五輪の開催地は、ほとんどが都市部から離れた場所にあります。でも札幌は1972年に冬季五輪が開催されたことからもわかるように、都市にいながら本格的なスキーが楽しめる稀有な土地なんです。もちろん、札幌以外にもウインタースポーツを楽しめるエリアは多数あり、今や世界的な人気を誇るニセコなど、北海道とウインタースポーツの歴史は切っても切れない関係にあります。

近年は海外からの観光客も多いニセコのスキー場(写真:フォトAC)

――冬季五輪のメダリストの多くが「北海道出身」であることからも分かるように、ウインタースポーツは北海道の歴史、文化そのものと言っていいかもしれません。

和田 雪が降る地域ではスキーやスノーボード、そうでない地域ではスケートといった“すみ分け”もされていますが、道民にとっては非常に身近なものなのは間違いありません。冬季五輪開催時の盛り上がりも、おそらく北海道とそれ以外の地域では温度差が大きいと思います。

広さゆえの“分断”と“文化の多様性”

――広大な大地と雄大な自然を持つ北海道ならではの魅力ですね。

和田 その通りです。一方で、あまりにも広大な土地であるがゆえに、少し不便や不都合を感じることもあります。これは道民とそれ以外の方でイメージに大きなギャップがあるのですが、北海道の西端から東端までは、距離にして千葉から奈良ほどもあるんです。つまり、一言で「北海道」と言っても、関東と関西くらいの距離がある。ですから、札幌に住んでいても、道内の他地域には行ったことがないという人は少なくありません。私も仕事柄いろんな場所へ行きますが、それでも足を運んだことがない町はまだあります。

――たしかに、道外の人からすれば「同じ北海道」という感覚で、あちこち回れると思ってしまいがちですね。

和田 「北海道に旅行に行くから、札幌でラーメンを食べて、旭川で動物園に行って、知床で自然を満喫しよう!」なんてプランは、スケジュール的にかなり厳しいです(笑)。北海道はみなさんがイメージする以上に広く、新幹線も現時点では函館までしか走っていません。移動手段も鉄道や車に限られます。しかも、鉄道路線は多くが廃線となっており、高速道路網も整備が進んできたとはいえ、道内移動はまだまだ簡単ではありません。旅行を計画される方には、「行きたい場所と距離感」をしっかり調べたうえでのプランニングをおすすめしたいですね。

――なにからなにまで、スケールが大きい!

和田 これも『図解 北海道の話』に書いたのですが、道内各地から集合するのに一番便利なのは、実は多くの直行便が就航している羽田空港だったりします(笑)。でも、その広大さこそが、北海道独自の文化を育み、他にはない魅力になっているのも確かです。

とにかく広い北海道!東京から大阪まですっぽり!(『図解 北海道の話』より)

――和田先生は、これまでも北海道の「歴史・文化」を多くの方に伝えてきたと思うのですが、今後はどうやってその魅力を発信していくお考えですか?

和田 長年、北海道について発信してきた中で感じるのが、「北海道は歴史への意識が希薄」ということです。というのも、多くの道民は明治以降に本州などから移住してきた人々の子孫であり、街づくりの歴史が浅いという意識を無意識に持っているんです。私がショックだったのは、「札幌で冬季五輪が開催されたことを知らない子どもたち」がとても多かったこと。先ほども話したように、北海道とウインタースポーツは切っても切れない関係のはずなのに、その歴史が伝わっていない。これは教育の課題でもあり、文化継承の課題でもあると思っています。札幌は現在、冬季五輪の招致活動を一時停止していますが、個人的にはぜひ再び招致を目指してほしいと願っています。札幌だけでなく、道内各地を開催地にすることで、より多様で魅力的な大会になるでしょうし、それを機に「北海道の歴史」にもっと誇りを持ってもらえたらと考えています。私自身も、これからもそのための活動を続けていきたいと思っています。

――貴重なお話、ありがとうございました!

取材・文/花田雪

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 北海道の話』
監修:和田哲


【Amazonで購入する】

★累計300万部突破!『眠れなくなるほど面白い図解シリーズ』初の“地域探求ジャンル”!ガイドブックでは教えてくれない北海道の面白い知識の数々を専門家が徹底解説!★

広大な土地と、エリアごとに様々な魅力を感じることのできる北の大地“北海道”。
お祭り、グルメ、多様な観光スポットなど、その魅力から国内、国外問わず多くの人が観光に訪れます。
しかし、おいしいお店や観光スポットの情報は知っていても、意外と北海道という土地の本当の面白さを知らない人も多いのではないでしょうか。
そこで本書では、長年北海道を街歩きして研究してきた著者が、北海道の面白すぎる歴史や食の知識、地名や風習のトリビアなどを余すことなく徹底解説!

『北海道の開拓がスピーディーにできたのは屈強な囚人たちがいたから』
『北海道の隠れた激うまグルメ“シシャモのオス”』
『北海道の盆踊りは“大人の事情”で二部制』
など、すぐにでも誰かに話したくなるような内容が満載です。

北海道に住んでいる方も、そうでない方も、もっともっと北海道の魅力を知ることができる一冊です。

監修者紹介:和田哲(わだ・さとる)
編集者。街歩き研究家。北海道科学大学工学部都市環境学科客員教授。札幌や東京の広告代理店勤務を経て、2010年に株式会社あるた出版に入社。営業部を経て、タウン情報誌『O.tone』編集部デスクに。同誌では「古地図を歩く」の連載を担当し、2020年には連載をまとめた「古地図と歩く 札幌圏」を同社から出版。2021年に札幌の歴史を伝えるYouTubeチャンネル「ブラサトルチャンネル」開始。2022年5月に退社し、講演や街歩きガイド、著述業に専念。北海道や札幌の歴史の専門家として、NHKやHBCなどのテレビ番組、ラジオへの出演でも活躍している。

この記事のCategory

インフォテキストが入ります