世界的建築家の巨匠・安藤忠雄が目指した「自然と人間の調和」の世界観とは【建築の話】

コンクリート打ち放しは自然を写す鏡
建築家・安藤忠雄といえば、コンクリート打ち放しの建築を連想する人が多いでしょう。実際、彼の初期の代表作である住吉の長屋は、三軒長屋の真ん中一軒を切り取り、屋根のない中庭とした、コンクリート打ち放しの住宅でした。/p>
部屋を行き来するには、必ず屋根のない中庭を通らなけれならず、ひどい雨が降れば傘が必要になるでしょう。この不思議な建物は、私たちに何を語りかけているのでしょう。
間口2間14坪の超狭小敷地に建つこの建築の四方はコンクリートの壁で囲まれています。住人の視線と意識は当然、なかへと向かいます。中庭に差す光、吹く風、降り込む雨に注意が向くのです。つまり、住吉の長屋は、外とのつながりをあえて断つことで、自然と一体になれる空間をつくり出すものだといえます。
一般的に家は「暮らしを入れる器」と捉えられていますが、住吉の長屋は「自然を入れる器」といってもいいでしょう。「民家とは自然と一体となってうまれたもの」と考える安藤の思想と、長屋の持つ温かい人間関係が集約した建築なのです。
また、表情豊かな素材より、無機質なコンクリート打ち放しの方が、自然の気配と日々の変化をより感じることができると考えるのも、安藤の特徴です。
この思想は、後の代表作である光の教会や水の教会にも活かされています。住吉の長屋はたしかに不自由で不便です。しかし、この不便さや不自由さを、安藤は新たな価値へとかえました。
この価値観を暮らしに取り込むことで、自然厳しくも豊かで、変化に富んだ生活を営むことができるのです。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 建築の話』著/スタジオワーク
【書誌情報】
『図解 建築の話』
著者:スタジオワーク
身近な建物が楽しくなる。ナゾとギモンを一挙解決!屋根の形は、どうやって決まるの? 正面だけが西洋風の看板建築って、どんな構造? うだつが上がらないの、うだつって何? 日本の建築をテーマに、さまざまな建築のナゾを楽しく解き明かします。古民家から、お寺、神社、城、庭、代表的な近・現代建築まで、建築家ならではの視点で、建築物の見方、楽しみ方を図解します。理系の知識がなくても大丈夫。私たちの生活や伝統美など、暮らしの文化に根ざした日本建築のスゴさと面白さがわかります。建築士しか書けない精緻なイラストを満載。60項目で楽しむ建築エンターテインメント本です。
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