ダルビッシュを支えた「最強の2番手投手」真壁賢守(2003・2004年、東北)

3年センバツは史上初の9回4点差サヨナラ負け

 真壁の甲子園での覚醒は東北投手陣の相乗効果はもちろん、対戦する高校にも大きな影響を与えた大会だった。翌年のセンバツにも帰ってくるがこの大会では試練を迎える。真壁は調整ミスで大会前に腰を痛めるなど状態はよくなかった。

 初戦の熊本工戦はダルビッシュがノーヒットノーランを達成する。2回戦の大阪桐蔭戦はダルビッシュが本調子ではなかったため、真壁がリリーフとしてマウンドに上がる。3イニングをほぼ完璧に抑えるピッチングで勝利した。

 準々決勝は明治神宮野球大会で敗れた済美だ。この試合は真壁にとって大きな試合になった。リベンジに燃える東北はダルビッシュの調子や明治神宮野球大会の内容を配慮し、真壁を先発に起用。序盤から得点し、東北ペースで試合を進めていった。真壁は完投ペースで投げていた。最終回済美打線が真壁をとらえはじめた。それでも「気迫もあったし。このまま抑えてくれる」と若生監督は判断し、真壁に託した。続く1番・甘井謙吾の打球は右翼ファウルグラウンドに。捕球すればゲームが終わるはずだったが、大きく風に押し戻され、二塁手がグラブに当てたものの落球してしまう。

 ここで流れが大きく変わり、その後、連打を浴び、1、2塁から済美・高橋勇丞(元・阪神タイガース)がレフトのダルビッシュの頭上を越えるサヨナラスリーラン。大会史上初の9回4点差サヨナラ負けを喫したのだ。状態がよくないながらも最後まで投げきった真壁は、すぐに夏の全国制覇に向けて切り替えることができた。しかし、最後の夏はダルビッシュが好調だったこともあり、1/3を投げただけで終わった。最後の夏は悔しい終わり方だったが、実力を発揮しながらも、紆余曲折があった甲子園でのピッチングだった。

最後の夏は千葉経済大学附属高に敗れる

 高校卒業後は大学や社会人でもプレーをしたが現在は引退している。真壁がこれまで見せたピッチングは今後も語り継がれるだろう。

本文は『データで読む甲子園の怪物たち』(ゴジキ著:集英社刊)より。

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【書誌情報】
『データで読む甲子園の怪物たち 』
著:ゴジキ


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ダルビッシュ有 田中将大 森友哉 髙橋宏斗 藤浪晋太郎 梅田大喜 真壁賢守 町田友潤 伊藤拓郎 吉永健太朗 松本哲幣 上野翔太郎 斎藤佑樹 浅村栄斗 今井達也 中村奨成 吉田輝星 寺原隼人 平田良介 佐藤由規 中村晃 菊池雄星 清宮幸太郎 中田翔 今宮健太 大谷翔平 根尾昂 山田陽翔 鷲谷修也 副島浩史 島袋洋奨 佐々木麟太郎

ゴジキ(@godziki_55)
野球著作家。著書に『戦略で読む高校野球』(集英社新書)、『甲子園強豪校の監督術』(小学館クリエイティブ)、『21世紀プロ野球戦術大全』(イースト・プレス)、『巨人軍解体新書』(光文社新書)、『アンチデータベースボール』(カンゼン)など多数。Yahoo!ニュース公式コメンテーターをはじめとして、メディアへのコメント寄稿を多数おこなう。

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