【脳疲労回避】短期と長期を賢く使い分け! 脳が重要情報だけを長期保存するメカニズム【脱・疲労回復「疲れないしくみ」をつくる脳の習慣】

脳を疲れさせない記憶のメカニズムとは?

短期記憶と長期記憶を使い分けている

 脳の連携を理解するうえでは、記憶のメカニズムも重要です。記憶には「短期記憶」と「長期記憶」の2つがあり、さらに長期記憶は3つのタイプに分かれます。

 まず、短期記憶とは、その場で得た情報を一時的に覚えておく働きです。例えば電話口で聞いた数字を、メモするまでの間に覚えていられるのは短期記憶によるものですが、しばらく経つと忘れてしまう。これが典型的な例です。

 短期記憶は数十秒から数時間程度しか保持されず、その間に人間が一度に覚えていられる情報量は5~9個程度の文字や数字といわれます。電話番号が市外局番を除いて7桁前後なのも、その範囲で記憶しやすいように設計されているためです。

 短期記憶は、目や耳といった感覚器官から送られてきた情報が「海馬」という部位に一時的に保存されている状態です。海馬は「脳のメモ帳」のような存在で、重要度の低い情報はすぐに消去されます。コンビニで買い物をしたときの合計金額や、道ですれ違った人の服装のように、重要度の低い情報は消えていきます。

 一方で、重要度の低そうな情報でも繰り返し使われたり、感情を伴って強く印象に残ったりすると、脳は「これは重要だ」と判断し、「長期記憶」として保存します。長期記憶は、数日から数年、場合によっては一生維持されることもあります。毎日停めているコインパーキングの最大料金、初恋の相手の名前、昔の旅行の思い出などがそれにあたります。

 このように、短期記憶と長期記憶の間には明確なしくみの違いがあります。そのため、何年も前に一度会った人の名前は覚えているのに、昨日紹介されたばかりの人の名前を思い出せない――そんな現象が起こるのです。脳は情報の重要度と使用頻度をもとに、記憶を取捨選択しているわけです。

3種類の長期記憶

 長期記憶も、最初は短期記憶と同じく海馬に保存され、そこから脳が「重要」と判断した情報だけが長期記憶になります。

 この長期記憶には、意味記憶・エピソード記憶・手続き記憶の3種類があります

 意味記憶とは「赤信号で止まる」「富士山は日本一高い山」といった「いつ覚えたか」が定かではない一般的な知識や概念で構成された記憶です。

 エピソード記憶は、個人の体験に基づいた記憶で、感情とともに思い出される出来事――例えば、目を腫らすほど泣いた卒業式や、初めての海外旅行などです。

 そして手続き記憶は、意識せずに行える動作の記憶で、自転車の乗り方やPCのタイピング、楽器の演奏など、「体が覚えている」と表現されるものです。

 意味記憶とエピソード記憶は、大脳皮質に保存されてワーキングメモリと連携し、思考や判断の基礎として活用されます。これらがあるからこそ、トップダウン処理がスムーズに働き、効率よく情報を処理できるのです。一方、手続き記憶は小脳が大きく関与しており、体の動きを支える役割を担います。この記憶は、大脳が衰えても失われにくく、認知症を発症した高齢者でも、箸を使ったり、かつて演奏した楽器を自然に扱えたりするのはこのためです。

 3つの長期記憶は、互いに独立して存在しているわけではなく、連携しながら働いています。料理をつくるときには、レシピの知識(意味記憶)を思い出し、過去につくった経験(エピソード記憶)を参考にしながら、包丁を扱う動作(手続き記憶)を自然に行っている、というのがその例です。こうした記憶の整理と連携が上手にできると、脳の負担を減らすことができます。

記憶のしくみ

【出典】『脱・疲労回復 「疲れないしくみ」をつくる脳の習慣』著:梶本修身

【書誌情報】
『脱・疲労回復 「疲れないしくみ」をつくる脳の習慣』
著:梶本修身


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