大谷翔平ド軍へ。高額報酬の内実【二宮清純 スポーツの嵐】

全てが規格外の大谷翔平
FA権を利用してエンゼルスからドジャースに移籍した大谷翔平の報酬は、10年総額7億ドル(約1015億円)。
これを受け、MLBドットコムは<リオネル・メッシがFCバルセロナと2017年に結んだ4年6億7400万ドルを上回った>と報じた。言うまでもなくプロスポーツ史上最高額である。
驚いたのは、その支払方法だ。7億ドルのうち、実に97%の6億8000万ドル(約986億円)が契約期間終了後の後払いで、契約期間内(2024年~33年まで)は、年に0・3%分の200万ドル(約2億9000万円)しか受け取らないというのだ。
なぜ、大谷サイドはこんな複雑な支払いスキームを選んだのか。背景にあると見られるのが、ラグジュアリー・タックス(ぜいたく税)対策だ。
ぜいたく税とは、MLBが、戦力の均衡を目指して97年に導入した制度で、課徴金制度ともいう。
もし、この制度がなければ、潤沢な資金力を誇る大都市の富裕球団とローカル球団との間に深刻な格差が生じ、レギュラーシーズンは味気ないものになる。ひいてはMLB全体の人気にも影響が及ぶ。
それを阻止するために設けられた制度だが、当時の制度設計者も、ぜいたく税を軽減する巨額の“後払い契約”についてまでは知恵が及ばなかったようだ。
もっとも、この手を用いたのは大谷が初めてではない。ドジャースではムッキー・ベッツやフレディ・フリーマンも、契約終了後に分割して受け取るスキームを組んでいる。
なお、ぜいたく税の対象となる規定額については、毎年のように変更される。たとえば2022年は2億3000万ドル(約319億円)、23年は2億3300万ドル(約337億8500万円)、2024年には2億3700万ドル(約344億円)になる予定だ。
では、規定額をオーバーした球団はいくら徴収されるのか。最初の年は超過額の20%、2年連続は30%、3年連続は50%。22年はメッツ、ドジャース、フィリーズ、ヤンキース、パドレス、レッドソックスが課徴金の対象となった。
話を大谷に戻そう。先に説明した後払い方式を、善意に解釈すれば、ぜいたく税を軽減されるドジャースは、その分をさらなる補強に回すことができる。
「ドジャースと私は、ロサンゼルスの街で、ワールドシリーズ制覇のパレードをするという同じ目的を共有していること、それを100%宣言できます」
と大谷。有言実行の男の新しい挑戦が始まる。
初出=週刊漫画ゴラク2024年1月5日発売号
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