なぜキリスト教はカラスを嫌うのか? 聖書に記されたイメージ戦略とは【眠れなくなるほど面白い 図解 カラスの話】


キリスト教では嫌われてるみたい

そうですねえ、キリスト教は基本が羊飼いの宗教ですから、弱った子羊をつついたりしそうなカラスはあまり好きではないでしょう。
キリスト教(に限りませんが)は、さまざまな土着の伝承や他の宗教と対立し、時に取り込みながら発達したものです。そして、一神教において神はただ一人ですから、多神教を併合した場合、「それも神のみわざだから」とまとめてしまうか、「それは悪魔だから」と排除するか、どちらかです。
多神教の狩猟採集民にカラスを崇める例が多いような気がしますが、それならば、一神教であるキリスト教としてはカラスを悪者にしてしまったほうが簡単かもしれません。カラスはしばしばオオカミとセットで、そのオオカミは羊飼いの天敵、つまり悪魔の象徴だからです。
その痕跡らしいものは聖書に残っています。旧約聖書では荒野に身を隠した預言者に対し、神がカラスや猛禽に食べ物を運ばせます。中央アジアには捨てられた幼児にカラスが肉を運んだという伝承があり、何かそういった伝説があったのをキリスト教が取り込んだ気配がします。
「ノアの箱舟」では、陸地が現れたかどうかを知るため、最初にカラスを飛ばしますが、カラスは帰ってきませんでした。次にハトを放すと、ハトはオリーブの枝をくわえて戻ってきます。メソポタミアの伝説ではカラスが証拠を持ち帰るので、これも伝説を取り込んだ際、キリスト教の神の象徴であるハトに置き換えられたのでしょう。
キリスト教でカラスが嫌われる理由
異なる信仰を持つ文化に制圧された場合、しばしば信仰の書き換えが行われる。
↓
キリスト教社会に制圧された国や地域では、それまで崇めていたものが「悪魔だった」と排除され、一神教が浸透していった。
ちなみに・・・
旧約聖書では
荒野に身を隠した預言者(神の声を聞き、広める人)に食べ物を届けたという逸話があります。箱舟にも乗っていたカラスは、陸を探すために飛ばしたら帰ってこなかったとか。
中央アジアの英雄譚「ジャンガル」では
ある王国が滅ぼされ、王族の赤ん坊が荒野に捨てられたが、カラスとオオカミがこれを助けたという伝説があります。赤ん坊は成長して勇者となり、国を取り返したそうです。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 カラスの話』著:松原 始
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 カラスの話』
著:松原 始
「カラスはなぜ怖いのか?」がわかる本!
黒い羽を虹色に輝かせ、時に人を威嚇し、悠然と街を歩く。
不吉なシンボルとされる一方、賢さで知られる彼らの生態や魅力を面白く伝える1冊です。
「カラスはほんとは怖くない!?」
「読めばよむほど、好きになる!?」
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