古代エジプトの神は神殿に実在すると考えられていた【眠れなくなるほど面白い 図解 古代エジプトの話】

古代エジプトの神は神殿に実在すると考えられていた
外界から遮断された空間で神性を保つ
古代エジプトでは、神は単なる概念ではなく、神殿という場所に宿ると考えられていました。
神殿は「神の家」とされる聖なる空間で、高い壁がめぐらされ、その内部構造は外界から厳重に遮断され、神聖さを保つために細心の注意が払われました。とくに神殿の最奥部「至聖所」には神像が安置され、神の力がそこに実在すると信じられていました。この空間には一般人は立ち入れず、神官だけが特別な資格をもって接近することができました。
神殿には神の日常生活を再現するためのものが備えられ、目覚めから食事、眠りまでが儀式的に行われました。香を焚き、衣を着せ、食事を供えるなど、神の存在を維持する世話が重要視されました。こうした奉仕は単なる形式ではなく、神の力を保つことと国家の安定に直結するものとみなされていたのです。
また、神殿は宗教施設にとどまらず、経済活動や教育の中心でもありました。土地を所有し、労働力を管理し、神官や書記が知識の伝承にあたりました。神殿には豊富な文書や記録が保管され、天文学や医学など、さまざまな学問の研究が行われていたと考えられています。
このように、神殿は地域社会の中心的存在であり、神の現存と王権の正統性を結びつける装置として、きわめて重要な意味をもっていたのです。
神殿はどんな場所だった?
古代エジプトの神殿は、神聖さを保つために外界から厳重に遮断されていた。神殿内には神のための衣服や食事などを供えていたほか、学問研究のための文書や記録なども保管されていた。




【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 古代エジプトの話』著:河合 望(エジプト学者・考古学者/筑波大学人文社会系教授)
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 古代エジプトの話』
著:河合 望(エジプト学者・考古学者/筑波大学人文社会系教授)
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