知性と学習力を兼ね備えた森の知恵者 “山の王者”ヒグマの素顔とは?【眠れなくなるほど面白い 図解 クマの話】


日本のクマ代表!ヒグマ

● 体は大きく重い:体長180〜280cm、体重は大きなオスだと600kgを超えることも。
● 鼻先がややつぶれている:鼻筋が低く、やや平たい顔立ちをしている。
● 肩に盛り上がったコブ:肩の筋肉が発達しており、横から見ると大きく盛り上がっている。
● ツメが長くて直線的:前足のツメは長く、湾曲が少ない。木登りは苦手なものの、掘るのは得意。
● 毛色は茶〜黒:基本は茶褐色だが、黒っぽい個体や灰色の個体も。顔や首に白っぽい毛が交じることもある。
近づきすぎてはいけない 山の王者
日本で「クマ」といえば、多くの人はヒグマをイメージします。北海道に生息するヒグマは、国内最大の野生動物であり、森に暮らす生き物のなかでも象徴的な存在です。アメリカクロクマよりもはるかに大きく、オスでは600kgを超える個体もいます。
肩に盛り上がった筋肉のコブが特徴で、土を掘り返したりと、力仕事に優れた体つきをしています。また、前足のツメはしっかりと直線的に伸び、鋭さもバツグンです。
ヒグマは世界的には「ブラウングマ(Brown Bear)」と呼ばれており、ロシアやヨーロッパ、中央アジア、北アメリカの一部まで、北半球の広い範囲に分布しています。地域によっては「グリズリー」とも呼ばれ、個体の大きさや性格も多様です。北海道に生息するものは、エゾヒグマと呼ばれる亜種で、先住のアイヌの人々からは「キムンカムイ(山の神)」として崇められてきました。
その歴史は長く、化石記録によれば、今から50万〜100万年ほど前には、すでにユーラシア大陸に広く定着していたと考えられています。過酷な氷河期やさまざまに変化する環境を生き延びてきた、まさに適応の王者ともいえるでしょう。
その堂々とした風格とは裏腹に、人の気配を察知すると静かに立ち去ることも多いといいます。しかし、場合によっては攻撃に出ることもあるため、油断は禁物。山の王者には、人間側も敬意を持って、それなりの距離を取ることが必要なのです。
とはいえ、ヒグマはただの怖い生き物ではありません。長い歴史を背負い、知性と繊細さを併せ持った、私たちと同じ時代を生きる同胞でもあります。
危機管理能力バツグン 警戒心の強い慎重派

ヒグマは、その大きな体に反してとても警戒心が強く、人間の気配を察知すると、スッと森の奥へ引いてしまうこともしばしばです。驚くほど慎重で、怖がりな一面を持っています。
しかし、子グマを連れた母グマや、食べ物を確保している最中の個体は、わずかな刺激にも敏感に反応し、ときには攻撃的になることがあります。実際、北海道ではヒグマと遭遇してケガを負うという事故が毎年のように報告されており、注意するに越したことはないでしょう。
また、食性は実に多彩で、春には山菜や新芽、夏から秋にかけては果実や昆虫、川上りするサケなどを食べます。冬眠前は特にエネルギーを多く必要とするため、栄養価の高いものを大量に食べて脂肪を蓄えます。季節に応じて賢く食べるのが、ヒグマの生きる知恵なのです。
学習能力バツグン クマ界一の知性派

ヒグマの魅力は、「大きくて強い」だけではありません。近年の観察記録からは、知性や柔軟な発想力を備えていることがわかっています。
たとえば、岩の下にエサがあるのを発見し、それを前足で器用に転がして取り出す個体もいれば、ドアやクーラーボックスのしくみを理解して開けてしまう個体も。さらには、石をいくつも積み上げて踏み台のように使おうとする行動も確認されました。これは、道具を使うという知的行動の初歩です。
実際、ヒグマの脳容積はクマ科のなかでも大きく、その分、記憶力や学習能力も高いと考えられています。
「見た目は猛獣、中身は知恵者」――そんなギャップも、ヒグマを語るうえで欠かせない魅力のひとつでしょう。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 クマの話』監修:山﨑晃司
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 クマの話』
監修:山﨑晃司
世界中数多くの動物園で飼育され、アニメや漫画、ファンシーキャラクターのモチーフとしても起用されることの多い人気の動物「クマ」。
最近では日本全国で目撃が相次いで発生したり、温暖化の影響で冬眠をしないクマも確認されたりすることから、話題に事欠かない今大注目の動物です。
しかし、ペットとして飼うことは難しく、ときに人を襲う恐ろしい側面も持ち合わせるクマ。
それなのになぜ人間にとって馴染み深く身近な存在に感じるのでしょうか。
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愛玩動物、猛獣、食用、ワーキングアニマルなど、さまざまな角度からクマの生態と特徴を解説し、クマの知られざる魅力に迫ります。
これを読めばクマのことがもっと好きになること間違いなしの一冊です。
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