痛みの上に成り立った芸「踊るクマ」に隠された残酷な歴史【眠れなくなるほど面白い 図解 クマの話】

痛みで芸を仕込む 見世物とされてきたクマたち
見世物禁止! クマを自由に!
昔からヨーロッパやアジアの一部では、「踊るクマ(ダンシングベア)」が大道芸の見世物として人々を楽しませてきました。ツメやキバを抜かれ、鼻にリングを通され、音楽に合わせて前足を上げるクマたち。一見、愉快なその姿の裏側には、苦痛によって動きを刷り込むという痛々しい訓練の歴史があります。熱した鉄板の上で踊らされ、痛みを結びつけて覚えさせる。そんな過酷な方法が取られていたのです。
こうした「芸」は長らく観光文化とされてきましたが、1990年代以降、動物福祉の意識が高まり、多くの国で禁止法が整備されていきます。なかでも注目されたのが、インドのカルベリア族への支援です。彼らは何世代にもわたりダンシングベアを生な り業わ いとしてきた人々。動物愛護団体は、ただクマを取り上げるだけでなく、生活再建もセットで支援しました。クマを保護区へ移す代わりに、家族には職業訓練や生活費の支援、子どもには教育の機会を提供し、”クマと人間の両方を救う”形をとったのです。こうして、クマたちは見世物としての人生から解放され、静かな保護区や飼育施設のなかで余生を送れるようになりました。
現代ではダンシングベアも減りつつあり、「動物を見世物にしない」という意識が広がりはじめています。
ダンシングベアとは?
音楽に反応、苦痛の記憶が蘇る
音楽に合わせて前足を上げるクマ。観客に喜ばれるその姿の裏には、苦痛によって動きを刷り込まれた記憶が隠れています。

見世物の裏にある現実
熱い鉄板の上で、痛みと恐怖によって踊らされ、鎖や鼻輪を無理やりつけられる……。そんな過酷な訓練が行われていた。

クマも人も救う支援とは?
動物愛護団体は、ダンシングベアを生業としてきた人々にただ“やめさせる” だけではなく、生活再建もセットで支援しました。クマを保護区へ移す代わりに、彼らに職業訓練や生活費の支援を行い、子どもには教育の機会を提供しました。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 クマの話』監修:山﨑晃司
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 クマの話』
監修:山﨑晃司
世界中数多くの動物園で飼育され、アニメや漫画、ファンシーキャラクターのモチーフとしても起用されることの多い人気の動物「クマ」。
最近では日本全国で目撃が相次いで発生したり、温暖化の影響で冬眠をしないクマも確認されたりすることから、話題に事欠かない今大注目の動物です。
しかし、ペットとして飼うことは難しく、ときに人を襲う恐ろしい側面も持ち合わせるクマ。
それなのになぜ人間にとって馴染み深く身近な存在に感じるのでしょうか。
「クマは大体力士2人分の重さ」「死んだふりは意味ある?クマに出会ったときの対処法」
「ホッキョクグマは皮膚が真っ黒で毛が透明?」「年々増加している“新世代クマ”って!?」
「イエティとビッグフットの正体はクマ?」
愛玩動物、猛獣、食用、ワーキングアニマルなど、さまざまな角度からクマの生態と特徴を解説し、クマの知られざる魅力に迫ります。
これを読めばクマのことがもっと好きになること間違いなしの一冊です。
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