神社に数学の問題を奉納!? 知られざる「算額文化」とは【眠れなくなるほど面白い 図解 大人のための算数と数学】


算術のはじまり
日本の算数&数学の姿を探ってみる
算数はそれぞれの国ごとに、使用する教科書の相違から、数え方が少し異なります。日本ではかけ算「九九(くく)」を1の段から9の段まで、1×1から9×9まで丸暗記するように教えますが、インドでは19×19や12×18といった2けた同士のかけ算の答えも暗記できるように教えています。
算数という用語はもともとは算術と呼ばれており、数学全般を学ぶ学問とされていました。教科名として算数が使われるようになったのは1941年頃といわれています。
算数の起源を考えるときに「和算」との関係を知る必要があります。この数学の前身ともいえる和算は、江戸時代に大きく発展しました。
特に有名なのが、1627年、吉田光由(みつよし)(1598~1672)によって書かれた『塵劫記(じんこうき)』です。そろばんの使用法や測量法など、日常生活で役立つ具体的なものが書かれています。


日本の数学史に一線を画した人物に、関孝和(たかかず)(1642~1708)がいます。彼は数学の問題文の条件を文字や数式に表し、それによって問題文を整理することから解を求める手法を見出しました。日本の数学の基礎は彼の考え方がもとになっているともいわれています。
そして日本独自の文化のひとつである「算額(さんがく)文化」が生まれるきっかけにもなったのです。「算額」とは、「和算」において、問題が解けたことを神仏に感謝し、ますます勉学に励むことを祈念して奉納された絵馬といわれています。
やがて、人びとの集まる神社仏閣を問題の発表の場として、難しい数学の問題だけを書き解答を付けずに奉納するものも現れ、それを見て解答や想定される問題を再び算額にして奉納することも行われました。
このような算額奉納の習慣は世界に例を見ず、日本独自の文化であるといってもいいでしょう。
『例題で知る日本の数学と算額』(森北主出版)によると、日本全国には975面の算額が現存していると記されています。現存する算額で最も古いものは栃木県佐野市にある星宮(ほしのみや)神社にあり、1683年に奉納されたとされています。昭和初期の時代の算額も存在していることから見ても、明治以降洋算化の進む中、この風習は和算家により約90年前の時代まで続けられていたことがわかります。
近年、算額の価値を見直す動きが各地で見られ、一部では算額を神社仏閣に奉納する人びとも増えています。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 大人のための算数と数学』監修:小宮山 博仁
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 大人のための算数と数学』
監修:小宮山 博仁
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文系人間をはじめ苦手意識の強い小中高の算数と数学をまるごと、一気に学び直す一冊。
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さらに実社会で、日常生活でどんなことに利用、活用、応用されているかを知ると、より身近に感じられ、その必要性がわかる。
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