ジェット旅客機の翼にはなぜフラップが必要なのか?【眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話】


なぜフラップが必要なのか?
ジェット旅客機は徐行が苦手だった
ジェット旅客機の翼は、速く飛ぶことを考えて小さく薄くつくられています。そのため、徐行はあまり得意ではありません。しかし、離陸や着陸する時には、どうしても減速する必要があります。速い速度だと離陸や着陸の距離が長くなってしまい、滑走路の長さには限度があります。
また、たとえ滑走路が無限に長いとしても、飛行機にも限度があります。例えば、鳥は速い速度で飛び上がるとすると、足が折れてしまう恐れがあります。だからといって、足を丈夫にし過ぎると、ダチョウのように速く走ることはできても、空を飛べない鳥になってしまいます。飛行機の場合も同じです。丈夫で重い脚にするよりも、できる限り減速して離着陸したほうが得策なのです。そのためには、できるだけ遅い速度で、大きな揚力を得る工夫を考えなくてはなりません。その装置がフラップなのです。
フラップとは、「羽ばたき」、あるいは「垂れ下がったもの」といった意味がありますが、日本語訳はなく、そのままフラップと呼んでいます。揚力を計算する式から、揚力を大きくするには、揚力係数と翼面積を大きくする必要があることがわかりますが、その両方を一挙に解決するのがフラップです。
フラップは、翼面積を大きくしつつ、翼の反り(キャンバ)も大きくすることで、遅い速度でも揚力を大きくできる装置です。
なお、フラップを出すと、揚力とともに抗力も大きくなってしまいます。そこで揚力だけがほしい離陸の時はほどほどに、揚力と同時に抗力もほしい着陸の時にはたくさん出す、といった使い方をしています。
なぜフラップが必要なのか

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話』著:中村 寛治
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話』
著:中村 寛治
「飛行機はなぜ、どうやって空を飛べるのか」という基本から、最新の知識、身近な航空雑学まで、飛行機の魅力をたっぷり図解でわかりやすく教える一冊。
この記事のCategory
オススメ記事

車と飛行機、何が違う? ジェットエンジン始動の秘密【眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話】

燃料はどこへ?ジャンボ機がドラム缶1000本分を積める秘密【眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話】

“地震、雷、火事、親父”より飛行機が怖いのは「ネコ」!?【眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話】

成層圏の空に揺れる光「オーロラ」ポーラールートで見える自然の神秘【眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話】

見た目以上にたくさんある!飛行機が自由に飛ぶための「さまざまな翼」【眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話】

飛行機はなぜ飛べるのか?自動車と飛行機に働く「4つの力」の話【眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話】

飛行機のエンジンは離陸時にどのくらいの力を出しているのか【眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話】
