神の男性器から生まれ、数々の浮名を流した絶世の美女
見る者すべてを虜(とりこ)にしたとされる美の女神アフロディテの誕生は、とても変わっています。
母なる大地の原初神ガイアの企(くわだ)てにより、息子クロノスに男性器を切り落とされたウラヌス。その男性器に海に投げ捨てられ、波間を漂いました。やがて泡(アプロス)に包まれた男性器が美神となったというものです。
裸身のまま流れ着いたキプロス島に上陸すると、足元に草が茂り、花々が咲き乱れます。その姿を見た愛の神エロスは、彼女を母のように慕って敬います。季節の三女神はアフロディテに仕えることを誓い、神の衣をまとわせてオリュンポスに導きました。
あまりの美しさに驚く神々。そしてゼウスは彼女を養女とします。
この絶世の美神が鍛治の神ヘパイストスと結婚したことは、深い謎(なぞ)とされています。ヘラが単独で生んだヘパイストスは、毛むくじゃらで足の不自由な醜い姿をしていたからです。
もちろんアフロディテは夫に不満。勇壮で見目麗(うるわ)しい戦(いくさ)の神アレスを愛人とし、夫のワナによって恥ずべき不貞の現場が神々に晒(さら)されても、その関係を続けました。
そうしてアレスとの間に子をもうけながら、さらに人間らとも浮気を繰り返しますが、生まれた子どもの多くは不遇な人生を送ります。
*ヘパイストス:ゼウスとヘラの子で、炎と鍛冶の神。まじめな性格で仕事熱心。ゼウスをはじめ大勢の神の武器をつくった。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の神々』
著者:鈴木悠介 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
早稲田大学卒業。予備校講師(世界史)。現在は各地でのライブ授業に加え、YouTubeの予備校「ただよび」やオンライン予備校「学びエイド」などの映像配信授業でも活躍中。また教育系YouTuberとしての顔も持ち、YouTube「すずゆうチャンネル」ではさまざまな世界史コンテンツを発信している。
恋多き神々の王・ゼウス、神々を従える最強の神・トール、4本腕の荒ぶる神・シヴァ。 個性豊かで魅力たっぷり! 世界の神様のキャラクターを大解説! ギリシャ神話、北欧神話、ケルト神話、エジプト神話、インド神話、メソアメリカ神話。人気抜群の神々と英雄たち32神(人)の性格とエピソードを、イラストと図を交え、わかりやすく紹介します。神々たちの愛憎ドラマのギリシャ神話、世界樹の下、終末に向かって突き進む北欧神話、妖精も登場するケルト神話……。神々と怪物、巨人、英雄たちが繰り広げる壮大な戦いや奇想天外な天地創造の物語など、想像を絶する神話のストーリーと世界観もくわしく解説しました。世界の神々を知ると、映画、小説、テレビドラマ、マンガ、ゲームがもっと楽しくなります!
公開日:2022.09.13