別天つ神と神世七代が誕生する
昔、天地は一つのものでした。それが分かれて二つになったとき、高天(たかあま)の原(はら)に最初に姿を現したのは、アメノミナカヌシノカミ(天之御中主の神)でした。続けてタカミムスヒノカミ(高御産巣日の神)が、次にカムムスヒノカミ(神産巣日の神)が現れました。この頃、大地はまだ水に浮いた油のように漂っている状態でした。
次に現れたのはウマシアシカビヒコヂノカミ(宇摩志阿斯訶備比古遅の神)とアメノトコタチノカミ(天之常立の神)です。ここまでの*五柱の神は男神と女神の区別がない独神(ひとりがみ)で、特別な存在として、別天(ことあま)つ神(かみ)といいます。五柱の神は、現れるといつのまにか身を隠しました。
次に現れた二柱も独神ですぐ身を隠し、その後、ウヒジニノカミ(宇比地邇の神)とスヒチニノカミ(湏比智邇の神)、ツノグイノカミ(角杙の神)とイクグイノカミ(活杙の神)、オオトノジノカミ(意富斗能地の神)とオオトノベノカミ(大斗乃弁の神)、イザナキノカミ(伊耶那岐の神)とイザナミノカミ(伊耶那美の神)など、男女五対の神が次々と現れました。
別天つ神以降、イザナキ・イザナミノカミまでを神世七代(かみよななよ)と呼びます。
*柱(はしら)は神を数えるときに使う助詞。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 古事記』
監修:吉田敦彦 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
1934年、東京都生まれ。東京大学大学院西洋古典学専攻課程修了。フランス国立科学研究所研究員、成蹊大学文学部教授、学習院大学文学部日本語日本文学科教授を経て、同大学名誉教授。専門は、日本神話とギリシャ神話を中心とした神話の比較研究。主な著書は、『日本神話の源流』(講談社)、『日本の神話』『日本人の女神信仰』(以上、青土社)、『ギリシャ文化の深層』(国文社)など多数。
古典として時代を超え読み継がれている『古事記』。「八岐大蛇」、「因幡の白兎」など誰もが聞いたことがある物語への興味から、また、「国生み」「天孫降臨」「ヤマトタケルの遠征」など、壮大なスケールで繰り広げられると神々の物語の魅力から、最近では若い層にも人気が広まっている。本書は神話・物語を厳選して収録し、豊富な図と魅力的なイラストで名場面や人物像を詳解した、『古事記』の魅力を凝縮した一冊!
公開日:2023.06.06