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ヘリコプリオン【古生物の話】

Text:大橋智之

丸ノコギリのような歯をもつギンザメの仲間

ヘリコプリオンは、古生代ペルム紀の海に生息していた軟骨魚類で、現在もいる生物ではギンザメに近い仲間です。化石は19世紀末から見つかっていましたが、その正体はなかなかわかりませんでした。理由はその奇妙な形です。

見つかるのはどれもらせん状に三重、四重に渦(うず)を巻く丸ノコギリのような歯の化石でした。他の種には見られない特徴で、さまざまな仮説が考えられたものの、この不思議な形状の歯がどのように体についていたのかは想像の域を出なかったのです。

そもそもサメ類やギンザメ類のように全身の骨格の多くが軟骨でできている軟骨魚類の体は化石になりにくく、見つかるのは硬く緻密な歯がほとんどです。このグループに属する古生物の研究は、多く発掘される歯を中心にして進められてきました。

ヘリコプリオンの正体解明が進展したのは発見から約100年経った2013年のことでした。

岩石に覆われたままの歯をCTスキャンにかけたところ、上アゴと下アゴの軟骨の両方が残っていることが確認され、その構造からギンザメに近い種類であることがわかりました。そして、その上アゴに歯が無く、下アゴの先端に丸ノコギリのような歯があって、アゴの内部で歯がらせん状にぐるりと並んでいたことが確認されました。

ふつう、サメ類ではアゴの奥で新しい歯がつくられ生えてくると、古い歯は押し出されて抜けていきます。ヘリコプリオンの下アゴの歯では、古い歯は抜け落ちずにらせん状に巻いて下アゴのなかに残されたと考えられます。

ちなみに、水族館のサメの飼育水槽の底には、抜け落ちたサメの歯が落ちていることがあります。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 古生物の話』
著者:大橋智之  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
大橋智之(おおはし・ともゆき) 北九州市立自然史・歴史博物館 学芸員。古脊椎動物担当。1976年、福島県生まれ。東北大学理学部卒。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。日本古生物学会会員。


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