美女に裏切られた怪力の士師
ヨシュアの死後、イスラエルの歴史は士師(しし)の時代に入ります。
士師とは、イスラエルの民を導き守った指導者のことで、異民族などから民を守った英雄と、政治に力量を発揮した2タイプがいます。 本項の主人公サムソンは、英雄タイプに属します。
サムソンの母は長いこと不妊で悩んでいました。ある時、彼女の前に神の天使が現れて、こう言いました。
「あなたは身ごもって男の子を産む。その子は胎内にいるときから神にささげられているので、その子の頭にかみそりを当ててはならない」
こうして生まれたサムソンは素手でライオンを殺すほどの怪力を発揮することができましたが、初めは親にもそのことを隠していました。
当時、カナンはペ* リシテ人の勢力下にあり、イスラエルの民もその支配のもとにありました。
サムソンはその怪力をもってペリシテ人を打ちのめし、その畑を焼いたりしました。同胞を助けるためにわざと捕まったこともありましたが、縛りつけられた縄を断ち切って1000人のペリシテ人をロバのあご骨で殴り殺してしまいました。
こうした活躍からサムソンは士師となり、イスラエルの民を20年間守りました。
しかし、デリラという遊女に、髪の毛を剃(そ)ってしまうと力が出なくなるという自分の弱点を言ってしまったため、ペリシテ人につかまり、目をえぐられて牢に入れられたのです。
ペリシテ人たちはサムソンを神殿で見せものにしようとしましたが、サムソンはよみがえった怪力をふるって神殿を壊し、その身もろともペリシテ人を瓦礫(がれき)の下敷きにしたのでした。
用語解説 *ペリシテ人 ギリシア付近から移住してきた民族。西洋では偏狭な人などに対する揶揄としてこの言葉が使われることがある。なお、パレスチナは「ペリシテ人の地」に由来する地名。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 聖書』
著者:渋谷伸博 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
1960年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。宗教史研究家。よみうりカルチャーなどで神話をテーマとした講座も開講している。著書多数。近著に『一生に一度は参拝したい全国の神社めぐり』『聖地鉄道めぐり』『神々だけに許された地 秘境神社めぐり』『歴史さんぽ東京の神社・お寺めぐり』(いずれもジー・ビー)、『あなたの知らない般若心経』(宮坂宥洪監修、洋泉社新書)、『諸国神社 一宮・二宮・三宮』(山川出版社)などがある。
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公開日:2022.06.17