英雄王の明と暗が際立つ王国統一物語
ダビデはベツレヘムの羊飼いで、長老のエッサイの末っ子でした。預言者サムエルに2代目の王として*油を注がれた時はまだ少年で、まったく無名の存在でした。
ダビデを一躍有名にしたのはペリシテの巨人戦士ゴリアトとの一騎打ちでした。 イスラエルの軍とペリシテの軍が対峙(たいじ)していた時、ゴリアトは陣から出てきて一騎打ちを申し入れてきたのです。
イスラエル側の兵が怖じ気づいて誰も応じられずにいるのを見たダビデは、自ら名乗り出ました。
ゴリアトはダビデが少年であるのを見て嘲(あざけ)りますが、ダビデは投石器でゴリアトを倒し、その首を切り落としました。
その後も戦功をあげ続け、民衆の人気を集めるようになりました。
また、音楽の才能にも恵まれており、竪琴で国王のサウルを慰めたりもしました。
そんなダビデにサウルは嫉妬し、殺そうとしたため、ダビデは各地を転々とした末、ペリシテに身をひそませたのです。
サウルの死後、ダビデは王位につき、ついにはエルサレムを都として王国を統一します。
しかし、そうなるとダビデの心にもゆるみが生じました。家臣の妻であるバト・シェバを愛してしまったのです。
ダビデはバト・シェバが妊娠したのを知ると、夫を戦地から呼び戻し、妻と寝るように工作したのですが、それがうまくいかないと、今度は彼を激戦地に送り出して戦死させたのです。
この愚行により、ダビデもまた神の恩寵を失ってしまうのです。その晩年は自らの子と戦うなど悲惨なものでした。
用語解説 *油を注ぐ 神の祝福を象徴する儀礼。祭司や王、預言者になる際に行なわれた。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 聖書』
著者:渋谷伸博 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
1960年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。宗教史研究家。よみうりカルチャーなどで神話をテーマとした講座も開講している。著書多数。近著に『一生に一度は参拝したい全国の神社めぐり』『聖地鉄道めぐり』『神々だけに許された地 秘境神社めぐり』『歴史さんぽ東京の神社・お寺めぐり』(いずれもジー・ビー)、『あなたの知らない般若心経』(宮坂宥洪監修、洋泉社新書)、『諸国神社 一宮・二宮・三宮』(山川出版社)などがある。
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公開日:2022.06.20