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2.農業と都市国家を生み出した灌漑技術【世界史】

Text:鈴木 旭

灌漑技術がスケールの大きな都市国家を出現させた。

メソポタミア文明のルーツは、チグリス川中流の町、キルクークの東方にある台地上で発見された集落ジャルモ遺跡である。紀元前6,500年頃、土器の使用の他、ムギの栽培と日干し煉瓦(れんが)による住居建設が確認されている。

定住生活が実現されていたのである。

しかし、メソポタミア文明の特徴である灌漑(かんがい)農法はまだ始まっておらず、天水農法であった。それが紀元前6、000年代半ば、チグリス=ユーフラテス流域の中流にあるサマッラ遺跡において、灌漑利用の農業が始まるとわずか500年の間に、あっと言う間に下流に広がって行く。

それを象徴するものが、灌漑技術なしには育成されない六条大麦やパン小麦、栽培種亜麻の栽培だった。チグリス=ユーフラテス下流、メソポタミア南部の乾燥地帯でも灌漑技術を利用すれば、それを生産することが可能であり、農業生活はできることが実証されたのである。

こうして開拓地が急激に広まり、大規模な集落が形成されるようになるとジッグラト(神殿)を中心とする都市国家が出現する。いわゆるウバイド文化が最初の都市国家を実現するのであるが、以来、新石器文化の集大成をなすメソポタミア文明が花開くことになる。

農耕可能領域が飛躍的に広がり、メソポタミア中流はもとより下流の肥沃な沖積地に広がって行く中で大輪の華を咲かせたのである。これが文化論として灌漑農耕が小さく、部分的に語られるのではなく、日干し煉瓦の発明、ジッグラトの建設、楔形(くさびがた)文字の発明など、多様な文化的要素を集合して表現する概念として「文明」という用語で表現されることになるのである。

 

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界史』
著:鈴木 旭 日本文芸社刊

執筆者プロフィール
昭和22年6月、山形県天童市に生を受ける。法政大学第一文学部中退。地理学、史学専攻。高校が電子工業高校だったためか、理工系的発想で史学を論じる。手始めに佐治芳彦氏と共に「超古代文化論」で縄文文化論を再構成し、独自のピラミッド研究から環太平洋学会に所属して黒又山(秋田県)の総合調査を実施する。以後、環太平洋諸国諸地域を踏査。G・ハンコック氏と共に与那国島(沖縄県)の海底遺跡調査。新発見で話題となる。本業の歴史ノンフイクション作家として、「歴史群像」(学研)創刊に携わって以来、「歴史読本」(新人物往来社)、「歴史街道」(PHP)、「歴史法廷」(世界文化社)、「歴史eye」(日本文芸社)で精力的に執筆、活躍し、『うつけ信長』で「第1回歴史群像大賞」を受賞。「面白いほどよくわかる」シリーズ『日本史』『世界史』『戦国史』『古代日本史』はロングセラーとなる(すべて日本文芸社)。他に『明治維新とは何だったのか?』(日本時事評論社)、『本間光丘』(ダイヤモンド社)など著書多数。歴史コメンテーターとして各種テレビ番組にも出演。幅広い知識と広い視野に立った史論が度々話題となる。NPO法人八潮ハーモニー理事長として地域文化活動でも活躍中。行動する歴史作家である。

いま地球規模の「人類史」という観点からも注目され、一方で一般教養、知識としても人気が高い「世界史」。世界規模の歴史を学ぶ上で大切なのは、歴史を流れとして捉えること、歴史にも原因と結果があり「なぜ」そこに至ることになったのか大もとの理由を理解すること、そして見ただけで忘れないようにビジュアルで視覚的覚えること。本書ではさらにアジアや日本の歴史とその役割にも重点を置き、最新の発見や新しい史論を取り入れた、世界史の学び直しにも、入門にも最適な知的好奇心を満足させる1冊。

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