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7.地方豪族の成長、混乱の時代を経て再統一【世界史】

Text:鈴木 旭

ナイル上流の第十一王朝が中下流勢力を征服。空前の繁栄を誇る。

エジプトでは古王国時代、第四王朝のクフ王らが大ピラミッドを建立するときは、率先して馳せ参じた豪族たちが第六王朝以後、自分の出身地で独自の思想でピラミッドを建設するようになった。力を蓄えることができるようになったためだ。

その結果、王国は四分五裂し、分散と混乱の時代に移る。第七王朝から第十王朝(前2,181年~前2,050年)の間である。その間、下流のデルタ地帯にアジア方面から遊牧民ヒクソスが侵入し、混乱と無秩序に拍車をかけた。

その間、中流のヘラクレオポリスを拠点とする第九、第十両王朝が勢力を拡大するが、前2,060年頃、テーベを首都とする第十一王朝のメントウホテプ二世が第十王朝を打倒し、再びエジプト統一を成し遂げる。以後、第十二王朝に引き継がれ、長く平和が保たれたのである。

特徴的なのは国内の開発が急速に進んだ点。歴代の王たちが、ナイル川の支流が注ぎ込む広大な沼沢地であったファイユーム盆地を干拓し、穀倉地帯に変貌させた功績は大きい。それを基盤にして、様々な文化芸術が花開く時代になった。

また、ピラミッド造営も復活するのであるが、壮大かつ不可思議な大ピラミッド建設を試みた形跡は見当たらず、日干し煉瓦を使う小規模なものに終わっている。人間的感覚で理解し、把握できる程度の建造物に終わっている。

こうして安定的経営を実現した中王国は、対外遠征はあまり行なわず、もっぱら州侯として納まる旧豪族たちの力を削ぎ落し、中央集権化を図る行政改革に力を入れた。その結果、旧豪族間の勢力均衡が保たれたため、長いエジプト史を通じて、最も繁栄した時代を実現できたのである。

 

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界史』
著:鈴木 旭 日本文芸社刊

執筆者プロフィール
昭和22年6月、山形県天童市に生を受ける。法政大学第一文学部中退。地理学、史学専攻。高校が電子工業高校だったためか、理工系的発想で史学を論じる。手始めに佐治芳彦氏と共に「超古代文化論」で縄文文化論を再構成し、独自のピラミッド研究から環太平洋学会に所属して黒又山(秋田県)の総合調査を実施する。以後、環太平洋諸国諸地域を踏査。G・ハンコック氏と共に与那国島(沖縄県)の海底遺跡調査。新発見で話題となる。本業の歴史ノンフイクション作家として、「歴史群像」(学研)創刊に携わって以来、「歴史読本」(新人物往来社)、「歴史街道」(PHP)、「歴史法廷」(世界文化社)、「歴史eye」(日本文芸社)で精力的に執筆、活躍し、『うつけ信長』で「第1回歴史群像大賞」を受賞。「面白いほどよくわかる」シリーズ『日本史』『世界史』『戦国史』『古代日本史』はロングセラーとなる(すべて日本文芸社)。他に『明治維新とは何だったのか?』(日本時事評論社)、『本間光丘』(ダイヤモンド社)など著書多数。歴史コメンテーターとして各種テレビ番組にも出演。幅広い知識と広い視野に立った史論が度々話題となる。NPO法人八潮ハーモニー理事長として地域文化活動でも活躍中。行動する歴史作家である。

いま地球規模の「人類史」という観点からも注目され、一方で一般教養、知識としても人気が高い「世界史」。世界規模の歴史を学ぶ上で大切なのは、歴史を流れとして捉えること、歴史にも原因と結果があり「なぜ」そこに至ることになったのか大もとの理由を理解すること、そして見ただけで忘れないようにビジュアルで視覚的覚えること。本書ではさらにアジアや日本の歴史とその役割にも重点を置き、最新の発見や新しい史論を取り入れた、世界史の学び直しにも、入門にも最適な知的好奇心を満足させる1冊。