北半球では風は低気圧で反時計回り、高気圧で時計回りに吹く
海に面した陸があるとして、その上にある空気について考えてみましょう。夏の昼間に太陽から日射があると地面は暖まりやすいので温度が上がり、その上に接した空気の温度も高くなります。一方、海の上であれば、水は地面ほど暖まりやすくないため、その上に接した空気の温度は陸上に比べて低くなります。
ここで暖かい空気は軽く、冷たい空気は重いという、よく知っている原理を当てはめれば、暖かい空気が上昇し、冷たい空気がその下にもぐり込むという現象が起きます。これが海風と呼ばれている風です。このときに空気の重さで比較すれば、冷たく重い空気のある側(気圧の高い側)から暖かく軽い空気のある側(気圧の低い側)へ風が吹いていることになります。この逆の夜間の陸風の場合も同様に、陸側(高気圧)から海側(低気圧)に風が吹いているといえます。
もっと規模の大きい現象で考えて冬のユーラシア大陸と太平洋を例に取ると、同じように冷たく重い空気のたまった大陸側(高気圧)から海側(低気圧)へと風が吹いていることがわかります。実際には回転している地球上でコリオリの力と呼ばれるみかけ上の力が働くため、運動する物体(風)は北半球では進行方向を右向きに変えられることになります。そこで、空気が集まってくる低気圧では反時計回り、空気が噴き出す高気圧では時計回りの回転を持ちます。このため、日本での冬の季節風の風向は北西になります。
また、地球全体で考えると、私たちが暮らす中緯度の偏西風帯では低緯度の暖かく軽い空気が高緯度の冷たく重い空気の上に流れる形になり、暖かい空気が北の冷たい空気の上へ乗り上げる領域と冷たい空気が北からもぐり込む領域が交互に形成される形ができあがります。
その境界面(前者が温暖前線、後者が寒冷前線)の振動幅が大きくなり、境界面を挟んだ領域が普段、春とか秋に目にする低気圧と移動性の高気圧になります。
低気圧は空気が収束して上昇流をつくりだすため、上空で水蒸気が冷やされて雲ができやすいのです。一方、高気圧は集まってきた空気が下降するため、空気の温度が上がって雲が消滅することになり、天気が良くなります。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 地学の話』
・地球の成り立ちについて興味がある
・地震のメカニズムについて知っておきたい
・今後日本が直面する気候変動について学びたい etc….
以上の方には「図解 地学の話」は大変おすすめな本です。
6400㎞とは何の距離かわかりますか?東京と宇都宮の間の距離が約100㎞ほどですから、その64倍ということになります。また、本州の長さは測り方にもよりますが、約1300㎞ほどですから、その約5倍です。決して短い距離ではありませんが、かなりの長さというわけでもないですね。実は、これは地球の半径の長さなのです。「えっ、地球ってそんなに小さいの!」とびっくりする人もいるかもしれません。そうなのです、地球は本当に小さい惑星なのです。
46億年。一年の46億倍。これはまた、気の遠くなるような時間の長さですが、これは地球の年齢。宇宙の年齢は138億年といわれていますので、それにくらべれば若いとはいえますが、それでも膨大な時間です。長く生きている小さな惑星、それが私たちの地球です。
中学や高校で地学を学んだ方もいるかもしれません。地学は、こうした地球についてさまざまなことを教えてくれます。ですが、地学の分野はきわめて多岐にわたり、そのすべてについて詳しく知ることは、不可能ではないかもしれませんが、大変難しいことです。本書は、地学の種々の分野を体系的に知るための教科書ではありません。49の面白そうなトピックを選び、図解をまじえて、なるべく物語風に語ったものです。
どの項目を読んでも、地学に興味のあるあなたなら楽しめるはずです。ぜひ本書を一読し、その深い世界を楽しんでください。
地球はどのようにして誕生したのか?
この記事では多くの人が一度は疑問に思ったことがある、「地球はどのように誕生したのか?」を解説します。不思議でロマンあふれる地学の世界の一歩を踏みだしましょう。
太陽系は、今から約46億年前にできました。太陽だけではなく、太陽系の惑星も同時にできました。最初は星間ガスの回転濃集から始まり、やがて中心星の太陽とそれを取り巻く円盤が形成されると、円盤の中にガスから固体の塵が晶出しました。その後、それらの塵が相互に合体して、岩石、微惑星、そして惑星や衛星が短期間に形成されました。惑星になれなかった小惑星、隕石、そして月の石の最古年齢は、いずれも46億年前であることから、それが太陽系形成年代とされています。
ですが、地球にはそのような古い記録は残されていません。その理由は、地球では他の惑星にないプレートテクトニクスが働いていて、常に古い岩石を新しいものにつくり替えているからです。地球最古の岩石はカナダ北部でみつかった40億年前のものであり、最古の物質は43 億7000万年前のジルコンという鉱物粒です)。地球年齢が46億歳ということは間接的に推定されているわけです。
多様な隕石の2段階による合体でできた地球
地球の岩石の化学成分はよく調べられており、しばしば惑星形成の材料物質であった隕石の組成と比較されます。すると地球岩石は多様な隕石の種類の中でも、特定のタイプ(エンスタタイト球粒隕石)と近縁であることが確認できます。
地球の岩石の化学成分はよく調べられており、しばしば惑星形成の材料物質であった隕石の組成と比較されます。すると地球岩石は多様な隕石の種類の中でも、特定のタイプ(エンスタタイト球粒隕石)と近縁であることが確認できます。ところが、このタイプの隕石には、大気や海水をつくる軽い元素がまったく含まれておらず、エンスタタイト球粒隕石だけでは、現在のような水惑星地球をつくることはできません。地球の大気や海水をつくっている水素の同位体組成(普通の水素の他に重水素と三重水素がある)は別のタイプ(炭素質球粒隕石)が起源であることを示しています。
したがって、地球形成は、岩石/金属からなる部分をつくったエンスタタイト球粒隕石集積の段階と、その後の炭素質球粒隕石の追加という2段階を経てできたことがわかってきました。
太陽系の中を実際に探査機が飛びまわって調べた結果、エンスタタイト球粒隕石は地球軌道周辺にも存在していたと考えられますが、水素などの揮発性成分を持つものは火星の外側の小惑星帯の中でも外側にしか分布していないことがわかりました。であれば、初期太陽系の円盤の中で大規模な物質移動を考える必要があります。
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出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 地学の話』
【書誌情報】
『図解 地学の話』
著者:高橋正樹 他
地学は「地球を対象とする自然科学」の学問。ジャンルが幅広く興味深い話題も多い。地球の誕生から、火山や地震のメカニズム、異常気象や天気図、地層・化石まで、「地球物地学」「火山学」「気象学」「地質学」の4テーマに分けて解説。図解で楽しくわかりやすく勉強になる1冊。
公開日:2023.04.30