ウタツサウルス
日本近海で生息していたもっとも古い魚竜のひとつ
古生代の終わりにあったペルム紀末の史上最大の大量絶滅を生き抜いたグループのうち、続いてはじまった中生代を席巻したのは爬虫類でした。中生代の初め、三畳紀(約2億5200万年前から約2億100万年前)になると、さまざまな爬虫類が陸、空、海で大きな存在感を示すようになります。
ウタツサウルスは、三畳紀前期の海に登場した魚竜と呼ばれる爬虫類です。
日本の宮城県南三陸町 (旧歌津町) の地層から化石が見つかったので、この名がつきました。「竜」とつくものの恐竜とはまったく別に海で進化したグループです。南三陸町にはペルム紀~ジュラ紀(約2億100万年前から約1億4500万年前)の地層が多く分布しており、ウタツサウルスのほかにも2種の魚竜が発見されています。
ウタツサウルスは魚竜のなかでも最初期に登場した古い種のひとつだと考えられています。後に進化した魚竜とは違い、背ビレはありませんでした。脚から変化したヒレが前後にあり、小さな指を5本もっていました。
頭が小さく、体は細長く、陸上を歩く脊椎動物とほかの新しい時代の魚竜との中間的な体でした。水中に適したつくりになっており、浅い海底で全長2メートル弱の体をウナギのようにくねらせながら泳いでいたと考えられています。
三畳紀以降、中生代の海で一大勢力を誇ることになる魚竜類は、水中に適応していくなかで、まったく別に進化したイルカ(哺乳類) によく似た姿になっていきます。
こうした現象を収斂進化と呼びますが、その最初期であるウタツサウルスには、骨盤の痕跡がまだ残っていました。
最初期の魚竜 ウタツサウルス
ウタツサウルス
中生代三畳紀前期
爬虫類 魚竜類
約2メートル
背びれがないのが特徴のひとつ。細長い体の割りに尾びれが小さいため、ウナギのように体をくねらせることでうまく泳いでいたと考えられる。
生物の収斂進化
爬虫類:イクチオサウルス(魚竜)
哺乳類:バンドウイルカ
軟骨魚類:ホオジロザメ
異なる系統の生物が、同じような環境で生活し同じようなエサを食べていると、似かよった形態へ進化を遂げることがある。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 古生物の話』代表監修:大橋 智之
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 古生物の話』
代表監修:大橋 智之
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公開日:2025.03.02
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