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感情表現 物語にうねりを起こす㉕心配【プロの小説家が教える クリエイターのための語彙力図鑑】

Text:秀島迅

NO.25 心配【しんぱい】[英:Unease]

【意味】

物事が悪い方向へ進むのではないかと思い、心が落ち着かないこと。

【類語】

気がかり 不安 懸念 危惧 憂慮 思いわずらう 案じる 気をもむ 危ぶむなど

体(フィジカル)の反応

  • 声が震える
  • 唾液を過剰に飲みこむ
  • 手汗をかく
  • 胃がキリキリと痛む
  • 頻繁に唇を噛む、舐める
  • 無意味に爪を噛む
  • 何度も腕や足を組み変える
  • 立ったり座ったりを繰り返す
  • 身につけているものをいじる
  • 髪の毛を触る
  • 鼻に指先を当てる
  • 落ち着きがなくなる
  • 険しい表情
  • スマホを頻繁に見る
  • 視線が宙を泳ぐ
  • 呼吸がひどく乱れる
  • 妙な心臓の鼓動を感じる
  • 息苦しさを覚える

心(メンタル)の反応

  • 胸がソワソワする
  • 目の前のことに集中できない
  • 用心深くなる
  • 小さな異変を気にする
  • 何かがおかしいと感じる
  • 結果が出る前から失敗する場面を想像してしまう
  • 血の気が引く感覚に囚われる
  • まわりの人から否定されている気がしてならない
  • 孤独を感じる
  • その場から立ち去りたくなる
  • ポジティブ思考になれない
  • 悲嘆に暮れる

身体の部位の状態を詳細に文章化したほうが読者に伝わる

心が不安で、気に病む「心配」は、感情のなかでも心身にさまざまな象徴的反応をきたします。
そのどれもが日頃の我が身に覚えのある状態だと気づきませんか?

つまり、日々暮らしているということは「心配」な事象だらけなのです。ちょっとしたことで険しい表情になったり、胸がソワソワしたりするのは、あなたがつねに何かを「心配」している証といえます。

しかも「心配」は、うれしさや満足感を表す「喜び」と比較すれば、心身にデリケートかつ微細な変化をもたらします。実際には「心配」というひと言では表現できないほど細分化されます。

よって物語創作で「心配」を表現する際は、身体の部位の状態がどうなっているかを詳細に文章化したほうが読者に伝わります。

たとえば、
『彼のことがひどく心配でならなかった。』
と、そのまま「心配」という語彙を用いて書くよりは、

『声が震え、胃がキリキリと痛む。全身の血の気が引く感覚に襲われ、もはや息すらできないほど、彼が気がかりでしょうがなかった。』
というふうに、声、胃、全身、血、息と、各部位での状態をこと細かに綴ったほうが臨場感に溢れ、「心配」度合いの切実さを読者にイメージさせることができます。

ひと手間もふた手間もかかるのが、「心配」という感情の表現です。しかし、こういった書き手の良心ともいえる丁寧な技巧の連続が、〝文章力の高い作家〟として評価されるポイントになります。

ぜひ修練を重ね、体得してみてください。

【出典】『プロの小説家が教える クリエイターのための語彙力図鑑』著:秀島迅

【書誌情報】
『プロの小説家が教える クリエイターのための語彙力図鑑』
著:秀島迅


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