満員の東京ドームに「スイッチ」を入れてもらった話!!巨人、高梨雄平投手の連載日記【ナシさんのアリな話 鉄腕奪取】第24回

リハビリ期間を過ごす中で
自分の引き出しが増えた!

『ラブすぽ』読者のみなさん、読売ジャイアンツの高梨雄平です。
前回は久々のコラムで、リハビリからの復帰、今シーズンの自分への「期待」みたいなものを書かせていただきました。今回は約半年間ほどの「リハビリ期間」を自分なりに振り返ってみようと思います。

まず、僕自身の野球人生の中で、「故障でチームを長期間離れる」という経験は昨年が初めてでした。正直、自分で思っていたよりもショックでしたね。周囲からは「連続40試合登板が9年で途切れた」とも言われたんですけど、記録や数字うんぬんじゃなくて、自分が怪我してチームにいないという現実が、けっこうメンタル的にも厳しかったです。「怪我をしない」こと自体も自分の武器だと思っていたし、そこはプロの世界でやっていくうえで心がけていた部分でもあったので、なおさらショックが大きかったんです。

それと、初めての経験なのでリハビリの仕方とかも全然わからないんですよ(苦笑)。「え、俺なにすればいいの?」って感じで。これまでは毎日試合があるのが当たり前で、自分の中でもルーティーンというか、生活のリズムが刻まれていたんですけど、それが全部なくなって。もちろん、一日の過ごし方がなにからなにまで違うわけで。リハビリをやるにしても、そこのスイッチを入れるのに苦労しました。

あと、これはリハビリ当時は気づけなかったこと、「今振り返れば」という話なんですけど、「痛み」がある時って思考の幅がメチャクチャ狭まるんです。頭の中の8~9割を「痛み」が占めてしまう。とにかく、物を取るのも、座るだけでも、お風呂でちょっと滑りそうになった時も、痛みがつねに襲ってくる。そうなると、思考を巡らせる「余白」みたいなものがなくなるんです。

僕の場合、その余白に生まれる創造性というか、クリエイティブな部分が自分の強みだと思っていたんですけど、それがまったく生み出せなくなってしまう。だから、自分を客観視できるようになるまで、時間がかかりましたね。痛みのレベルが少し下がって、そこでようやく「あの時の自分はこうだったな」って。

たとえば人に対しても、過剰に反応してしまう瞬間があるんです。しかも「怒り」という負の感情で。誰かに対してイライラしちゃったり、腹が立ったり。これも頭の中に「余白」がないから起きることなんですよね、きっと。昔、自分の祖父が身体を壊したとき、急に「不機嫌な人」になってしまったことがあったんですけど、それを思い出しました。

でも、その話をジャイアンツにトレーニングを教えに来てくれているボディビルダーの鈴木雅さんに話したら、「それは自然な反応なんだ」と教えてもらって。「痛みが出ると脳内にこういう物質が出て、それはこういう影響を身体に与えるから、それはそうなるよね」みたいにちゃんと理論で説明してくれたんです。だからそれを知って以降は、どこかが痛いと言っている人に対して、すごく優しくなりましたね。「俺も気持ち、わかるよ」って(笑)。

「怪我」に関して言うと、現役のアスリートとしては別に経験しなければそれに越したことはないと思うんです。15年か20年かわかりませんけど、現役を通じてずっと健康で、元気にプレーできた方がいいに決まっている。ただ、僕は現実問題、怪我をしてしまったワケで。その中で、しっかりと人と対話をして、それに対する理屈やアプローチを知れたことは、「引き出しが増える」という意味ではプラスになったんじゃないかなと思っています。もちろんこれも、「今振り返れば」というベースの話です。

僕はおそらく、世の30代男性と比較したらけっこう運動習慣のある方だと思うんですけど……(笑)。その中でも運動の組み立てだったり、抜くところだったり、やり方だったり、それらを再構築できる期間にできた。リハビリ中に水泳も始めたんですけど、めちゃくちゃいいです。水泳に関しては、全人類がやった方がいいと思います(笑)。

それ以外にも色々なことを試して、良いものを取り入れる作業をけっこうこなすことができたのは「リハビリ期間」だったからこそです。もともと、自分のやっていることをガラッと変えることへの抵抗感は人よりもないほうなんですけど、それでもシーズン中はなかなか難しいんです。「結果を出し続けなければいけない」シーズンの最中に、トレーニングや習慣を変えるのは当然リスクもある。順調な時間を送り続けていると、逆に変化はしにくいモノです。

以前のコラムで、自分の身体を使ってトライ&エラーを繰り返している、みたいな話を書いたんですけど、この半年間はそれをより深く時間をかけてやれた。そこは大きかったですね。食事もけっこう変えましたし、そういう知見も自分の中で増えたので、今年でプロ10年目34歳になりますけど、まだ「成長できる」実感が芽生えてきています。

満員の東京ドームを肌で実感!

とはいえ、やっぱり僕はプロ野球選手ですから一軍の舞台に戻って、結果を出してナンボの立場です。今はまだ東京ドームのマウンドを目指している途中ですけど、「戻りたい」と強く思った出来事が少し前にあったんです。

3月14日に東京ドームで長野(久義)さんの引退試合が開催されて、試合には出られないけど裏から見させてもらったんです。もちろん、長野さんの引退というトピックスも大きかったですけど、僕の中では久しぶりに満員の東京ドームを肌で実感できて、ファンの方の応援歌だったり、ドームの匂いだったり、そういうものを感じることができたんです。

いや、ドーム最高だなと。僕自身ずっとリハビリを続けて、もちろん良いトレーニングはできていたし、復帰に向けて色々と進めていたんですけど、なんていうか、どこかで完全にはスイッチが入っていない感覚があったんです。

そのスイッチを満員の東京ドームが押してくれた。だから今シーズンは、とにかくワンチャンスをしっかり掴み取って、東京ドームのマウンドの雰囲気を噛みしめに行きたいと思っています。
みなさん、応援よろしくお願いします。

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