【コラム】MLB怒り解消法 「10分我慢しろ!」【二宮清純 スポーツの嵐】

MLB流アンガーマネジメントで冷静に
誰が言い始めたか知らないが「短気は損気」とは、言い得て妙だ。
昨シーズンのパ・リーグのセーブ王・ホークスの杉山一樹が、登板後にベンチを殴って左手を骨折、登録を抹消された。
クローザーの杉山は4月11日のファイターズ戦(エスコンフィールド)、6対2と4点リードの9回裏に登板、試合を締めくくったが、2死後、四球と連打で1点を失った。
不甲斐ない自分への苛立ちが、登板後、自損行為という最悪のかたちとなって表れた。この日まで、7試合で1敗4セーブ、防御率9・00。好不調の波が激しく、フラストレーションもたまっていたのだろう。
「信頼を築き上げるのは地道な作業が必要だが、壊すのは一瞬」とは小久保裕紀監督。杉山はゼロどころかマイナスからのリスタートとなる。
「気持ちはわかるが、と言いたいところだが、それを言っちゃおしまい。感情をコントロールするのがプロ。まして抑えのピッチャーは精神状態が安定していないと、ベンチは1シーズン任せられない。こうした思慮の浅い行為は、自分だけじゃなくチームにも迷惑がかかる。杉山は、それをどれだけ理解していたか。小久保が指摘するように、信頼を取り戻すには、相当の時間が必要でしょう」(元在京球団投手コーチ)
昨年も同じような出来事があった。マリーンズのクローザー益田直也が8月19日、ゴールデンイーグルス戦(ZOZOマリン)後にロッカーを殴り、左手の甲を骨折してしまったのだ。
試合前、益田はプロ野球史上5人目の通算250セーブに、あと2に迫っていた。
9回裏、3対2と1点リードの場面で登板したが、四球に暴投がからみ、2死三塁から同点打を浴びた。続く打者に四球を与えたところで無念の降板。マリーンズは延長10回に決勝点を奪われ、3対4で敗れた。
杉山も益田も、利き手とは別の手で殴ったところが、救いといえば救いではある。かすかに冷静さが残っていた証拠だ。それでも骨折の対価は高くつく。後悔先に立たずである。
MLBの関係者から、かつてユニークなアンガーマネジメント法を紹介されたことがある。怒りのピークは、概ね事態発生直後から10分まで。アドレナリンの分泌の減少とともに怒りも静まり、徐々に自分を取り戻していくというのである。
ともかく10分我慢しろ――。これは金言である。
初出=週刊漫画ゴラク5月1日発売号
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