【コラム】長嶋茂雄賞の条件 サトテルが有力か【二宮清純 スポーツの嵐】

今年最も「走攻守で活躍し、ファンを魅了」した選手は…?

 阪神タイガースが、10月3日、球団史上初のセ・リーグ連覇を果たした。

 9月に7連敗を喫した4日後、巨人にゲーム差なしの勝率7毛差にまで迫られた時が最大の危機だった。それでも首位を譲らず、2位・巨人に3ゲーム差(10月3日時点)をつけてゴールテープを切った。

 気の早い話だが、リーグMVPは、打率3割6厘、39本塁打、106打点で三冠王のサトテルこと佐藤輝明で決まりだろう。

 阪神の選手の三冠王となると、ランディ・バース(1985、86年)以来、史上ふたり目だ。

 シーズン終了後には、もうひとつの勲章が待っているはずだ。今季から新設された「長嶋茂雄賞」だ。その栄えある第1号に選ばれる可能性が高い。ライバルはパ・リーグ二冠王(本塁打&打点)のホークス栗原陵矢あたりか。

 同賞は「走攻守で顕著な活躍をし、ファンを魅了するなど、日本プロ野球の文化的公共財としての価値向上に貢献した選手」を対象としている。

 賞の創設にあたり、榊原定征コミッショナーは「(長嶋さんは)今のプロ野球の隆盛を築いた。そういう記憶が100年、200年と続くような賞となってほしい」と語っていた。

 個人名を冠した代表的な賞としては「沢村栄治賞」があるが、こちらは登板25試合以上、15勝以上など7項目の選考基準がある。リリーフ投手は選考の対象外だ。

 翻って「長嶋茂雄賞」に明確な数値基準は存在しない。そもそも長嶋自体が「記録よりも記憶の人」なのだから、そうしたものは必要ないとも言える。

 ここで長嶋にまつわるトリビアをひとつ。1958年、長嶋は自らのミスでプロ野球史上初となるルーキーでの“トリプルスリー”(打率3割以上、30本塁打以上、30盗塁以上)を逃している。

 9月19日、後楽園球場での広島戦。長嶋は鵜狩道夫の真ん中絶好球を左中間スタンドに叩き込んだ。本当なら、これが28号になる予定だった。

 ところが長嶋は一塁ベースを踏み忘れていた。それに気付いたファーストの藤井弘が審判にアピールしたところ認められ、一塁ベースを踏んでアウト(結果は投手ゴロ)。

 もしベースを踏み忘れていなかったら、長嶋は打率3割7厘、30本塁打、37盗塁で、トリプルスリーを達成していた。逃した魚は大きかった。

 こうした茶目っ気も、ミスターが誰からも愛された理由のひとつだ。長嶋茂雄は「永久に不滅」である。

初出=週刊漫画ゴラク10月23日発売号

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