犯罪心理学が扱う対象
「犯罪心理学」と聞くと、凶悪な事件が発生した際に「なぜあのような残忍な犯行を実行するに至ったのか」といった犯人の心理を研究したり、あるいは「プロファイリング」によって犯人の性格や居住地を推定したりする学問というイメージが強いかもしれません。
しかし、このようなイメージは現実の犯罪心理学とは少々異なっています。というのも、犯罪心理学の扱う分野はもっと多岐にわたっており、必ずしも犯人の心理や犯人像を推定するだけの学問ではないからです。
具体的には、人はなぜ犯罪者になるのかを研究する「犯罪原因論」や、心理学の知識を応用して犯人逮捕に役立てる研究を行う「捜査心理学」のほかに、裁判のプロセスに心理学の知識を応用する「裁判心理学」、罪を犯した人物や非行少年をいかに更生させていくかを研究する「矯正心理学」、犯罪者の行動の特徴を調査し、その知識に基づいて効果的な防犯対策を立案する「防犯心理学」なども犯罪心理学の扱う分野となります。
つまり、犯罪心理学とは「犯罪という現象に関するさまざまな問題について心理学的な方法論を用いて研究し、そこで得られた法則を司法や行政に応用していく」学問ということができます。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 犯罪心理学』
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 犯罪心理学』
監修:越智啓太
監修者プロフィール
法政大学文学部心理学科教授。1965年、神奈川県横浜市生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科心理学専攻修了。警視庁科学捜査研究所研究員、東京家政大学文学部助教授、法政大学文学部准教授を経て2008年より現職。臨床心理士。専門は犯罪捜査への心理学の応用。著書に『犯罪捜査の心理学』(化学同人)、『ケースで学ぶ犯罪心理学』(北大路書房)ほか多数。
昨今、様々な事件や特殊詐欺など凶悪な犯罪が増えており、ニュースで犯罪に関する情報を聞かない日はないといえます。誰もが利用するSNSを介した犯罪も当たり前になっており、より巧妙化しながら身近に潜む問題にもなっています。こうした問題や実態について研究し、犯罪予防や再犯防止に役立てようとするのが『犯罪心理学』です。
犯罪心理学は、心理学の中でも実際の現場や実践に役立つことを目的とした“応用心理学”の1つで、特に犯罪行動・非行や犯罪者の心理・行動パターンに焦点を当てた研究分野です。専門書や教科書が多いジャンルですが、本書では図やイラストを用いて、1トピックを見開き1ページでわかりやすく解説。
“普通の人”が犯罪に手を出してしまう経緯、犯行内容から見える犯人像や周囲の環境、巧妙化する手口や防犯法など、知らなかった犯罪心理学を、楽しみながらもしっかりと学べる一冊です。
公開日:2024.07.01