犯人検挙に効果絶大な 「似顔絵」【図解 犯罪心理学】
事件を解決するため、目撃者の証言によって犯人の似顔絵を作成する。誰でも刑事ドラマなどで一度は見たことのあるシーンではないでしょうか。この似顔絵、現在の捜査においても、多く使われています。
犯人の顔を再現するのに使われる方法にはモンタージュ写真もあります。これは、さまざまな人物の顔のパーツを組み合わせて、人物の顔を作り上げていく方法です。
一見、似顔絵よりも精度の高い画像が作れそうですが、実はそうではないことがわかっています。その理由はいくつか考えられますが、大きいとされているのは、顔を再現する途中で候補となるいろいろな人のリアルな顔のイメージを見てしまうことです。このような状況になると、本来の顔の記憶をゆがめてしまったり、かえって忘れさせてしまったりすることがあるのです。
事実、1968年に東京府中市で発生した3億円強奪事件では、公開された犯人のモンタージュ写真によって見る人に先入観を持たせてしまい、かえって捜査を妨害したのではないかと指摘されています。
一方、似顔絵は似顔絵画家が目撃者からの情報を聞き取りながら、特徴をうまく捉えて犯人の顔を再現していきます。そのため、先入観なしに犯人に似た画像を作ることができるのです。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 犯罪心理学』
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 犯罪心理学』
監修:越智啓太
監修者プロフィール
法政大学文学部心理学科教授。1965年、神奈川県横浜市生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科心理学専攻修了。警視庁科学捜査研究所研究員、東京家政大学文学部助教授、法政大学文学部准教授を経て2008年より現職。臨床心理士。専門は犯罪捜査への心理学の応用。著書に『犯罪捜査の心理学』(化学同人)、『ケースで学ぶ犯罪心理学』(北大路書房)ほか多数。
昨今、様々な事件や特殊詐欺など凶悪な犯罪が増えており、ニュースで犯罪に関する情報を聞かない日はないといえます。誰もが利用するSNSを介した犯罪も当たり前になっており、より巧妙化しながら身近に潜む問題にもなっています。こうした問題や実態について研究し、犯罪予防や再犯防止に役立てようとするのが『犯罪心理学』です。
犯罪心理学は、心理学の中でも実際の現場や実践に役立つことを目的とした“応用心理学”の1つで、特に犯罪行動・非行や犯罪者の心理・行動パターンに焦点を当てた研究分野です。専門書や教科書が多いジャンルですが、本書では図やイラストを用いて、1トピックを見開き1ページでわかりやすく解説。
“普通の人”が犯罪に手を出してしまう経緯、犯行内容から見える犯人像や周囲の環境、巧妙化する手口や防犯法など、知らなかった犯罪心理学を、楽しみながらもしっかりと学べる一冊です。
公開日:2024.07.12