動機から見た連続殺人① 妄想から連続殺人に至る「幻覚型」【図解 犯罪心理学】
妄想から殺人を犯す幻覚型
FBIが犯行現場の状況を基に分類したのに対し、ホームズは動機的な側面を含めて、連続殺人事件を4つに分類しました。
最初のタイプは幻覚型です。これは妄想性の精神疾患によって引き起こされるタイプの連続殺人で、犯人は「自分が人から狙われている」といった被害妄想に取りつかれます。また、「世界を救うためには、人を殺さなくてはならない」という指令的な妄想の場合もあり、さらには、実際にそのような声が聞こえるといった、幻聴をともなうこともあるのです。
このタイプの犯人は精神疾患が進んでいるため、犯行現場は無秩序型になりがちです。さらに、捕まらないようにと積極的に策略をめぐらすわけではないことから、比較的早期に検挙されます。
なお、このタイプの殺人犯を語る上で、精神疾患を持つからといって、連続殺人を起こしやすくなるわけではないということに注意する必要があります。
アメリカでは6人を殺害したリチャード・チェイス事件、日本では連続殺人ではなかったものの、「手術の際に自分の体にはさみなどの手術器具を置き忘れられた」との妄想に取りつかれて医師を殺害した、青物横丁医師殺害事件などの事例があります。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 犯罪心理学』
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 犯罪心理学』
監修:越智啓太
監修者プロフィール
法政大学文学部心理学科教授。1965年、神奈川県横浜市生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科心理学専攻修了。警視庁科学捜査研究所研究員、東京家政大学文学部助教授、法政大学文学部准教授を経て2008年より現職。臨床心理士。専門は犯罪捜査への心理学の応用。著書に『犯罪捜査の心理学』(化学同人)、『ケースで学ぶ犯罪心理学』(北大路書房)ほか多数。
昨今、様々な事件や特殊詐欺など凶悪な犯罪が増えており、ニュースで犯罪に関する情報を聞かない日はないといえます。誰もが利用するSNSを介した犯罪も当たり前になっており、より巧妙化しながら身近に潜む問題にもなっています。こうした問題や実態について研究し、犯罪予防や再犯防止に役立てようとするのが『犯罪心理学』です。
犯罪心理学は、心理学の中でも実際の現場や実践に役立つことを目的とした“応用心理学”の1つで、特に犯罪行動・非行や犯罪者の心理・行動パターンに焦点を当てた研究分野です。専門書や教科書が多いジャンルですが、本書では図やイラストを用いて、1トピックを見開き1ページでわかりやすく解説。
“普通の人”が犯罪に手を出してしまう経緯、犯行内容から見える犯人像や周囲の環境、巧妙化する手口や防犯法など、知らなかった犯罪心理学を、楽しみながらもしっかりと学べる一冊です。
公開日:2024.07.15