カイル・ケラー
阪神からライバル巨人へ移籍!勝ちパターン起用も十分ある?
読売ジャイアンツと阪神タイガース――。プロ野球創世期からしのぎを削ってきた両球団の対決は「伝統の一戦」と呼ばれ、特に阪神の本拠地である甲子園球場で行われる試合は、どの対戦カードでも味わえない独特の雰囲気を醸し出します。
そのため、過去を振り返っても巨人・阪神間の選手移籍は極端に少ないことでも知られています。しかし2024年は少し事情が違います。昨年度日本一の阪神から、2人の投手が巨人へと移籍を果たしたのです。ひとりは、現役ドラフトで移籍を果たした馬場皐輔投手。そしてもうひとりが、昨季限りで阪神を退団した助っ人右腕のカイル・ケラー投手です。
ケラー投手と言えば、おそらく多くの野球ファンが思い起こすのが来日1年目、2022年開幕直後の投球でしょう。開幕戦でクローザーとして起用されながら、ヤクルト打線につかまり、山田哲人選手に同点弾、サンタナ選手に勝ち越し弾を浴びるという、苦すぎる日本デビューを飾ります。2試合目の登板でも1点リードの9回、セーブシチュエーションで登板しながら不安定な投球を見せてしまい、1死満塁のピンチを招いて途中降板(リリーフが打たれてこの試合も負け投手に)。
この年、阪神は開幕から記録的なペースで黒星を重ねることになりますが、新外国人だったケラー投手はその「戦犯」として阪神ファンから大バッシングを浴びることになります。
しかし、不調による二軍落ちを経験して以降は日本野球にもアジャスト。一軍復帰後は見違える投球を見せると、来日2年目の昨季も27試合で防御率1.71と抜群の安定感を見せました。
そんな日本野球にアジャストして見せた右腕に白羽の矢を立てたのがライバル・巨人です。昨季、巨人の救援防御率はリーグワーストの3.83。勝ちパターンを担える投手の補強は急務で、ケラー投手はまさに巨人が今季求めていた人材だったワケです。
今季、巨人の支配下外国人投手はケラー投手を含む4人体制となっていますが、他3人はサウスポー。チームバランスを考えると、ケラー投手が一軍で投げる機会は昨季以上に増えそうです。
春季キャンプではその投球を見ることができましたが、日本で過ごした2年間からくる自信もあってか、一球一球ていねいに、自らのボールを確認するように「マイペース」に投球練習をこなす姿が印象的でした。
クローザー候補である大勢投手が開幕に間に合うか微妙な状況の今、ケラー投手のセットアッパー、クローザー抜擢も十分ありそうです。
ケラー投手の最大の武器は、常時150キロを超える威力あるストレート。さらには縦に大きく割れるカーブと、来日後に覚えたというフォーク。これらのコンビネーションで、日本での2年間は59イニングを投げて74奪三振と、十分すぎる奪三振力を誇ります。
来日1年目は開幕直後の不振、昨季は家族の事情による途中帰国と、フルシーズン一軍で働いた経験はありませんが、万全の状態でシーズン通して投げることができれば、過去2年間を大きく上回る数字を残せるはずです。
着実に日本球界にアジャストしてきたことを考えれば、今季で31歳ながら「伸びしろ」も十分あるはず。巨人移籍を機に大覚醒すれば、特に甲子園での巨人・阪神戦では阪神ファンからの厳しい声も届きそうですが、本人は「阪神を倒さなければ優勝はできない」と古巣打倒に闘志十分。
2024年の伝統の一戦はぜひ、ケラー投手対阪神打線の元チームメイト対決にも注目してみてください。