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楽天パワハラ騒動。暴力暴言生む体質【二宮清純 スポーツの嵐】

Text:二宮清純

「パワハラのデパート」

 プロ野球の現役選手がパワハラ疑惑で調査対象となるのは前代未聞である。

 東北楽天は所属する安楽智大投手が、複数の後輩選手にパワハラを繰り返していたことを問題視し、本人にヒアリングを実施。その結果、疑惑はほぼ事実と認定し、自由契約を通告した。

 実際、どんなパワハラ行為が確認されたのか。

<今夏のZOZOマリンでのロッテ戦前に、ロッカールームである選手に「倒立しろ」と命令。その選手によると、身動きが取れない体勢でズボン、パンツを下ろし下半身を露出させられ、陰部には靴下をかぶせられたという>

<別の選手は指導目的で「アホ」や「バカ」などの罵声を浴びせられたという>

<21年の春季キャンプ中に平手打ちされむち打ち症状となったと、かつて在籍した選手が証言した>(いずれもスポニチ11月26日付け)

 暴言に暴力、そしていじめ。これが事実なら“パワハラのデパート”である。

 安楽は高校2年時、済美高(愛媛)のエースとして、13年春の甲子園で準優勝を果たした。

 初戦から決勝まで、全5試合に先発し、772球を投げた。これに対して「酷使だ」という声が多方面から上がり、米CBSスポーツは「まだ体が発育中なのに、正気の沙汰ではない」と報じた。

 15年、ドラフト1位で東北楽天に入団。先発投手としては伸び悩んだが、21年以降はセットアッパーとして50試合以上に登板するなど、ブルペンになくてはならない投手に成長した。

 それだけに今回のパワハラ騒動、チームにとっては大きな痛手だろう。だが、このご時世、放置しておけば、批判の矛先は球団に向く。

 それは宝塚歌劇団を見れば明らかだ。先輩からのいじめやパワハラを苦に自殺したと見られる事案は、歌劇団の前近代的な体質をあぶり出し、なかば見て見ぬ振りを決め込んでいた経営陣の責任をも浮き彫りにした。

 それでなくても、これまでプロ野球は暴力や暴言に対し、鈍感な世界だった。暴力は“鉄拳制裁”や“愛のムチ”といった美辞麗句に置き換えられ、暴言は“叱咤激励”と都合よく意訳された。

暴力や暴言を含めたパワハラ行為は「不品行」を理由にアグリーメント違反とする野球協約第60条に、明らかに抵触する。

 今からでも遅くはない。どの球団も支配下選手に対し、球界の法令遵守を徹底指導すべきだ。さもなくば、こうした不祥事は、また繰り返されるだろう。

初出=週刊漫画ゴラク2023年12月15日発売号

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