昨季は本塁打と打点の二冠王
「3月から時計をスタートさせて、10月までそれを継続できるとは思えない。(開幕時の投手復帰は)まだ、あり得ないと思っている」
ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は2024年12月、テキサス州ダラスでのウィンターミーティングに出席した際、大谷翔平の投手復帰について聞かれ、そう答えた。
「重要なのは右ヒジの状態だ。問題は、いつメジャーリーグの試合で投げ始めるか。そのために、どうビルドアップしていくか」
このコメントに接してホッと胸を撫でおろした。
ドジャースは2025年の開幕戦(3月18日~19日)を、東京ドームで行う。相手は今永昇太、鈴木誠也のいるカブスだ。
最も高値な「グループシート」のマススイート(10人定員)は176万円。「ホスピタリティパッケージ」のエキサイトシートは55万円(1人)。それでも、「ナマの大谷が見られるなら安い」という声がほとんどだというから、チケットの熾烈な争奪戦は必至だろう。
ファンの中には「大谷の記念すべき“二刀流”復活を、日本の開幕戦で観たい」という声もあるようだが、それはあまりにもハイリスクだ。もうしばらく辛抱すべきだろう。
周知のように大谷は2018年、23年と2回、トミー・ジョン手術(側副じん帯再建術)を受けている。
23年9月に受けた手術の経過は良好で、だからこそ24年シーズンにはMLB史上初の「50-50」(50本塁打・50盗塁)、ホームランと打点の2冠を達成することができたわけだが、投手としては一度もマウンドに立てなかった。
それでも3度目のMVPが証明したように、大谷は、打者の“一刀流”でも十分、チームに貢献し、相手に脅威を与えることができる。打者一本に絞れば、間違いなく25年シーズンも、24年と遜色ない成績を残すだろう。
何があっても避けたいのは、投手での復帰を急いだ結果の3度目のトミー・ジョン手術だ。それについて大谷は合同インタビューで「35歳を過ぎたあたりで3回目の手術をして、復帰に1年かけて、というのが正しい選択なのか」「現実的に見れば,やはり2回目くらいまでが投手としては理想なのか」と語っていた。
自らの最大出力に身体が耐えられるかどうか。すなわち臨界でプレーを続ける大谷にとって、成果と故障は、コインの表裏のように分かちがたく結びついている。「表」の時間が長く続くことを願わずにはいられない。
初出=週刊漫画ゴラク2025年1月10日発売号