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アスリートに求められる心技体の中で最も大事なのは「体」!【スウィングの真髄/辻村明志】

Text:辻村明志

氣と力はまったく別もの、「気が強い」と「力強い」は非なるもの

先ほどの実験で、「絶対にテーブルから手を動かすな」といわれた私は、全身に力を入れて動かないよう試みました。ところが力を入れれば入れるほど、荒川先生に指1本で軽く腕を、ときに体ごと持ち上げられてしまったことはすでに述べたとおりです。

日本人は欧米人に比べ、どうしても体格的にハンデがあります。そこで筋力トレーニングなどでフィジカル強化に取り組むアスリートも多いのですが、そうした風潮に対して荒川先生は、ひと言「氣の毒だ」とおっしゃったものです。もちろん荒川先生が、筋トレそのものを完全否定していたわけではありません。アスリートに求められる心技体ですが、3つのなかで最も大事なのは体というのが先生の持論でした。その考え方は私も同じです。

ただ、体格的なハンデを筋力をつけることで克服しようという風潮、いい換えれば力持ちになりさえすれば克服できるという風潮を、先生はとても嘆いておられました。実際、高い才能がありながら誤ったトレーニングで消えていった野球選手を、実名を挙げては悔しがったものです。そして 「力強くなる前に氣を強く持て。それが強くなる、ということだ」ともおっしゃいました。

ちなみに王さんは、V9時代の巨人軍のなかで、腕相撲をやればほとんどの選手に負け、走っても後ろから数えた方が早い非力な選手だったそうです。その王さんが世界のホームラン王になれたのはなぜでしょうか。少なくとも筋力アップに励み、力強くなったからではありません。荒川先生によれば、「体の使い方と氣の使い方を覚えたから」なのです。

そこに日本人選手が世界で勝つ、あるいはゴルフにかける時間もおカネも限られているアマチュアゴルファーが上達するヒントが隠されています。

【書誌情報】
『ゴルフのトップコーチが教えるスウィングの真髄』
著者:辻村明志

上田桃子、小祝さくらプロをはじめ、女子のトッププロたちをコーチしている本書の著者・辻村明志氏。王貞治選手の一本足打法を作り上げた故・荒川博氏に師事し、ゴルフ指導に取り入れたことは有名だ。本書は、荒川氏から受け継ぎ、コーチングに活用している「氣のスウィング理論」を解説するもの。「氣は心を動かし、心が氣を動かす」という、同氏の考えに基づき、氣の力をゴルフスウィングに活かすことを目的に、その方法をイラストと写真を使いわかりやすく紹介する。